突発的転移者への記録 第一部 テーマパーク
眠井 漠
第1話 ぼくたちはじゆうだ 記録者『マスコットキャラクター、ビッグテディベアのティム』
管理者からの警告
『文字を書くことのできない生物が対象となっているため思念入力式となります。また、本文は情報が著しく不足しているため、ナレーションが付属しております。それでも閲覧しますか?』
YES NO
『要求は受諾されました。これより、閲覧を開始します。』
ぼく たち は じゆうなんだ!? もう からだは いたまないんだ! たのしいな!うれしいな! やっと、おきゃくさまと あそべるんだ!
『対象は大きな音を立てながら園内を走り回っている』
いままでは とっても とっっても! いたかった! せなかをさかれて、おなかにはいられて、くさったごみをいれられて、くらくてせまいところに おしこめられて、なんで ぼくに こんなことをするのかわからなかった。ぜんぜん、ぜーんぜん!わからなかった!
『対象は大きな声を上げて「廃棄品箱」と書かれた鉄製の板を足で10回踏みつけた。』
だけどね あのひと えっくす? がきてから なにもかもよくなったの! しってた? けんきゅうしゃ さん! ひとって いろがあかくなると うごけなく なるんでしょ! ぼく おしえて もらったんだ!まえにぼくのところにきてくれたおとこのこ、あのこが ころんだとき なにかがめくれて あかくなってたの!
『対象は赤く汚れた判明不能な物体に剥き出しとなった手の骨組みをかけて皮をめくっている。』
だからね いまもめくってるの もういろがまっかっかだね うごかないね けんきゅうしゃさん
あんなに おおきなこえ だったんだもん きっと うれしかったんだよね? そうだよね? やっぱり!
『対象は転がっているピンポン玉ほどの白い玉に話しかけている。』
ああ うれしいなぁ!おきゃくさんもきっと よろこんでくれるはず! あかいいろに そめて あげるんだ! あかいいろ ぬれますって おなかに かいておこう!
『対象はステンレス製のバケツに入った赤い液体にブラシを付けて腹に文字を書き始めた。』
『その時、テーマパーク中央のスピーカーから音楽が流れた。アトラクションの電源も入ったようで真っ暗だった部屋に冷たい明かりが灯る。』
なんだろう? もしかして、まだあかくなってないひとが いる? おきゃくさまかな? しかたないな まってて! すぐによろこばせて あげるからね!
『対象は手を振り回しながら走り出した。 「廃棄品倉庫」と書かれた扉を開けて黒い液体が飛び散ったことが原因で汚れた廊下を走っていく』
あれ? おきゃくさまは どこにいるのかな? まぁ、いいか! はしれば みつかる!
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