生えてくる家
朝起きると、壁から五十五インチの4K液晶モニターが生えてきていた。八割ほど顔を出しているそいつはモニターに素人が投稿したようなアダルト動画を垂れ流し、俺は枕元の斧の柄頭でそれを叩き割り、起き上がってから斧のヘッドで粉々に砕く。
天井からは首吊り用に結んだ縄が垂れ下がり、紙垂が取り付けられている。死後は神道で葬ってくれるのだろうか。どうせならお稲荷様の使いになりたい。そう思いながらもまだ人生に未練がありありの俺は、それを斧でズタズタに引き裂き、千切り、ぐしゃぐしゃにした。
俺の家は昔から変なものが生えてくる。だいたい俺にゆかりがあるものだ。デカいモニターが欲しかったり、過去には自殺未遂もした。でも生えてきたものを諾々と受け取って暮らすのは癪だ。何か恐ろしい見返りを求められている気がする。ただ俺の思い込みかもしれないし、あるいはそれらをフリマサイトで売り捌けば小遣い稼ぎにはなるだろうが、品質保証なんて俺にはできない。無責任なことは、俺のポリシーに反する。
そういうわけで俺は起きてから家中を行き来し、生えてきた変なものをぶっ壊す。残骸を掃除し、このために用意した焼却炉で焼き尽くす。
俺は他人から無償で何かを与えられるのが嫌いだった。
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