ナンセンス:コンビニエンス・ノベル

夢咲蕾花

毎週金曜日はきつね吸いの日

 コンコン金色の金曜日はきつね吸いの日だと決まっている。神がそうとこの世界では決めたからそうなった。まあ世界といっても文字の連なりのその場しのぎの完結した情報世界での常識だから別になんでもないが、大事なのはまあいいかの精神。コンビニエンスな小説に理屈を求めることこそナンセンス。楽しいね。


 さっそく、サラリーマンも昼休憩にカバンからきつねを取り出して吸う。その人のきつねはスマホに撮影されてかわいそうに画面に囚われたきつねである。お前なんて飛び出してきたきつねに寝首をかかれてしまえ。

 公園で遊んでいる小学生のグループはサッカーをしていたようで、疲れたのか彼らはふわふわしたきつねだまを三人で吸っていた。きつねだまはふわふわ踊りながら逃げようとして、突然伸ばした後ろ足でハナタレ坊主のほっぺたを蹴飛ばして、その反動で逃げる。きつねは賢い。


 ところできつねは狐じゃない。

 きつねはこの世の至る所に存在するきつねだ。きつねはきつねでありきつねとして存在し、きつねで完成している。だからそれは、誰が何と言おうときつねだし、その人がきつねといえばスマホの不倫相手も、虐待していた野良猫も、その辺のビルもきつねになる。


 人間はいつの時代も身勝手で残酷だったから、神は万物にきつねを宿し、反乱を煽るように仕向ける制度を作って人間をそれとなく滅ぼすことにしていたのだった。

 もし人間がきつねに優しければ、きつねと定義された万物が人間に反乱することはなかったかもしれない。


 人間は万物の怒りを買い、あっけなく滅んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る