寂しがり屋と強がり屋

@Rala_0425

第1話

10/25 午前3:42 星空の下で



ふたりで毛布にくるまって、

夜空を眺めたのは

何年ぶりのことだろう...



付き合いたての頃この山に来たときは、

綺麗な夜空をみるために、

わざわざ今より寒い時期を選んだ。

だけど、今日寒さを我慢してここに来たのは、

もうふたりの時間が少なくなったからだ...




正確には、カノジョに残された

残り時間が少なくなってしまった...




この数ヶ月、狭い病室で点滴をぶら下げ、

缶詰状態だったカノジョは、

もうすぐこの世界から旅立ってしまうらしい...



そんな事を考えてしまうと

ついつい夜空ではなく、

カノジョの顔ばかりみてしまう。

病気のせいか、

少し弱々しい息遣いのカノジョを...





そんな事を思いながら

カノジョをみていると、

急にその瞳が大きくなる。

そして、すぐカノジョは手を組み目を閉じる...



何が起きたかわからず、

ボクが固まっていると

カノジョはボクの方を向いて、

「ねえ!今の見た!?」と目を輝かせている。



いきなり眼が合い、驚いたボクは

「なっ何のこと...?」と少し慌ててしまう。



空じゃなくて、キミの顔ばかりみていたなんて

恥ずかしくて言える訳ない...





少しがっかりして、落ち着いたカノジョは

「見えなかったのかぁ...

今あそこにね、流れ星が通ったんだよ」

と夜空を指さしながら教えてくる。



病院を抜け出したカノジョは、

きっと苦しいはずなのに弱音ひとついわず、

流れ星が観れたことを子どものように

喜んでいる...

それと対照的にボクは、

そんな無邪気なカノジョに

もう会えなくなると思うと、

その笑顔が...視界が滲んでいく...



「もお、なに泣いてるの」

少し笑いまじりに

カノジョはボクの肩を叩く...





「...もう...痛くなくなっちゃったよ....」

何でボクはこんな事を言ってしまうのか...

この一言で活発だったカノジョが

どれほど傷つくか...

少し考えたらわかるはずなのに...



少し顔を曇らせたキミが、

落ち着いたトーンで話を続ける。





「ねえ...いま流れ星に

なにお願いしたと思う?」



「病気の...こと...?」



「違うよ...」

そういうとカノジョは夜空へ視線を戻した。



「アナタのことをお願いしてたの...」



「え?」



「私ね...アナタが心配なの」



「なんで...」



「私が死んじゃった時、

寂しがり屋のアナタが私を追いかけないで

いい人に出会えますように」ってお願いしたの



「....」



「だからね、

私がいなくなっても

生きるのを辞めちゃだめだよ」



「うん...」



「きっと楽しいだけじゃないし、

辛いこともあるだけど...

アナタの人生を...一生懸命生きて欲しい

もし...もしも、また会えたら私にアナタが

どう生きたか聞かせて欲しいな」



「ああ...約束するよ...

キミの分まで......」



「よかった」



ボクの返事を聞き終えたカノジョは

声を殺して泣いてるボクを、

落ち着かせるため

ボクの右肩に両手を置き抱きしめる。



服越しに伝わるカノジョの温もりが

ボクの涙を止めることはない

それどころか

ボクはいつかこの温もりを

失うことを考えてしまう...


咳込むかのように

嗚咽まじりの息継ぎをする...

ボクの泣き声に反応してか

カノジョは弱くなった身体で手の力を強める。



そんな優しさがボクの涙を誘発することに

なぜカノジョは気が付かないのか....



そんなことを考えながら

ボクもカノジョを抱きしめる...






しばらくふたりだけの時間が流れ、

夜空が白み始めた...





日の出をみせようと

キミの背中をポンポン...っと叩くが、

全く反応がない。

いつの間にかボクの肩を枕に

眠ってしまったようだ。


指先が冷えてしまているキミを

起こそうと揺るが、全然動かない。

しかたなく、眠ってしまったカノジョを

車に連れ帰るために抱いて立ち上がる。



ボクの温もりはキミに届いているだろうか...

車へと向うために階段を降りる。



キミに向かって風が吹き、髪を揺らす...

カノジョが少し軽くなった感覚がする...

まるでその風がカノジョを

連れ去ってしまうかのように...



気付かなかったのか

気付こうとしなかったのか

現実に直面したボクの目から涙が溢れる。



僕がキミを連れ出さなければ

今日もキミは僕に笑いかけてくれたのかな...



でも、わがままなボクは

狭い病室に閉じ込められたキミを...

昔ふたりで星を観た

この山に連れてきたかったんだ...




誰にも聞かれない泣き声が

ボクの口から溢れる...



ーーーーーーおわりーーーーーーーーーーーー






神様は意地悪だな...

どうして私と彼を離れ離れにするんだろ.....

でも彼と合わせてくれたのも神様なのかもね...


私はもういなくなっちゃうけど

アナタはまた誰か大切な人を見つけて

私がいなくなってもアナタが独りぼっちになりませんように...




またね...

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