反逆者どものラジオ逃亡記

@sondnichirin

プロローグ

大歓声が湧き上がった。王都の神祭。この年は聖歴で建国から六〇〇年の節目であり、憲法に書かれていた「王は宗教に関わらない。」を、この日ばかりは破ることにした。聖職者の強い願望と、国王陛下のお心で、議会では満場一致で可決され、神祭への出席が実現した。以下に記すのは、国王陛下が言われた宣言である。

「みなさま。この聖なる祭にお越し下さったこと、そして私の出席を許されましたことを、心より感謝申し上げます。みなさまへお話させていただくのは王位継承式の日以来となります。このような機会を得られましたことが光栄であります。この国の発展のあらんことを、ともに祈ってまいります。」

 この一分に満たない演説でさえ、聴衆の胸中が埋め尽くされるほどであった。第九代サンサリア公国国王、ソトゴン・ワシガ。即位から三十余年、国民の前には映像フィルム以外で姿を見せていなかったのだ。この貴重な一瞬に立ち会えた喜びが、いかに強大なものか。

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