第16話 ネバールの民

=====前回のぼうけん=====

 棺桶かんおけの中で目を覚ました僕。どうやら探し求めていた商人・トリネコが助けてくれたようだ。天使のような羽根とかわいい耳のついたコスプレイヤー・トリネコ。僕は商人となり彼女と共に人生を歩もうと思った。

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トリネコ「でもさ、ウチと一緒に冒険したいなら、ウチの親族にも顔合わせしてもらわないとだね。」


僕「え…?それってまさか…プ…ポロ…プロポロ…」


トリネコ「違う違う。てか言えてないじゃん。ウチの出身地、ネバールの民はとても仲間に執着する民族。ウチが紹介もせずにアンタと冒険してるって誰かにバレたら、ただじゃ済まされないからさ。」


僕「よし、結婚しよう。」


トリネコ「話聞いてた?仲間として紹介したいだけだってば。とりあえず、一旦ネバールに戻るよ。」


 僕とトリネコは大量ののろいの装備を手に、フィールドを上に16歩、右に6あるいてネバールの村へと向かった。トリネコは、袋から取り出した【せいすい】をふりまいてまものを魅了させ、戦闘不能にさせた。

 そんなわけで、僕のLVレベル依然いぜん、1のままだ。


◆◆


―ネバールの村―


 森の奥に小さなテントが立ち並ぶ。どうやらここがトリネコの出身地・ネバールらしい。村人はせいぜい10人といったところか。民族衣装を身にまとい、あやしげな雰囲気を醸し出す村人たち。


トリネコ「チョーロ、帰ったよ。」


チョーロ「トリネコか。よくぞ無事で戻った。いや、おぬしが無事でないわけはないと思ってはおったが、それでもわしら年長者というのはどうにもこうにも若人を心配してしまうのが世の常じゃ。して、なにやら見慣れない男がいるの。まぁ、初めて会ったということは当然見慣れないわけじゃが…。して、その男子は。いや男かどうかもわからぬ。とすると、少年か青年かもわからぬな。その者は。」


トリネコ「旅の仲間だ。アルフ、自己紹介を。」


僕「長老様。お初にお目にかかります。僕はアルフ…まことの名をアルフ・カーネ・コーゼニーと申します。ハヤクしろの城下、チョットまちから参りました。職業は、勇者。世に蔓延はびこ諸悪しょあく根源こんげん、魔王ホロボスを討ち破った伝説の勇者・スクエルの唯一の子孫でありその後継者です。以後、お見知りおきを。こちらの美しいトリネコ様は、旅先で凶悪な魔物の群れと戦い、傷ついていた僕を救ってくださった命の恩人です。どうか今後とも末永くよろしくお願いいたします。」


トリネコ「……誰」


チョーロ「わしは長老ではない。まだ74歳の前期高齢者じゃ。後期高齢者となる日まで残り329日ある。長老とは75歳以上、つ村で一番年長者であるものを指す。まぁ長生きの老人という意味では字のとおり長老ではあるが、わしは年齢で言うと村の年寄りの中でも若い方じゃ。1番上がロージー121歳、2番はコーレー98歳、3番が…」


僕「説明はもういい」


トリネコ「まぁ、そういうわけで、ウチはこれからこのアルフと一緒に転売の旅をしてくっから、ヨロシク。」


チョーロ「そういうわけとはどういうわけじゃ。どこの馬の骨…いや鹿の骨か熊の骨かもしれぬ…ともかく、そのような得体のしれない者と冒険をするなど、断じて…決して…絶対に許すわけにはいかぬ。だが許さなかったが為にトリネコがその者とどこかへ逃亡してしまう恐れもある。そういうわけで、わしからおまえたちに試練しれんを課そう。ちと難しいかもしれんが…」


僕「端的に言ってくれ」


チョーロ「このネバールから少し行ったところに、【ひれんのどうくつ】という有名な失恋スポット、つまりは別れの名所がある。おまえたちはそこへ2人で行ってくるのじゃ。見事無事めでたく別れたら冒険の話はなし。ゼロ。ナッシングじゃ。」


僕「なんで失恋が前提なんだよ…まだ付き合ってもないんだが。」


トリネコ「ずっと1人で荷物抱えて旅するのは疲れるからね。いいじゃん。受けてたつよ!で、洞窟からなにをとってこればいいの?」


チョーロ「洞窟の奥に…咲いているのか咲き誇っているのか置いてあるのか飾ってあるのか定かではないが、とにかく洞窟の奥にあるラフレシアの花じゃ。」


僕「一番咲いてほしくない花だな。行く気が失せてきた」


チョーロ「そうじゃろうそうじゃろう。いかなくてもいいのじゃよ。いくもいかぬもおまえたちの自由じゃ。そうだ、おまえたちに旅のお守りをやろう。まぁ、お守りなんて気休めみたいなもんじゃが、ないよりはあったほうがいいじゃろう。トリネコ、お前には【たいようのゆびわ】だ。お天道様てんとさまがおまえの命を守ってくれるじゃろう。して、そっちの者。おまえにはこれをやろう。【いたいようのゆびわ】だ。」


僕「僕を潰す気満々みたいだな…」


トリネコ「さ、アルフ、早く行こ。」


 トリネコはたいようのゆびわをはめた手で、僕の手を握り走り出した。








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