SPG(slow-playing game)

タカナシ トーヤ

第1話 旅立ちの朝

ある晴れた朝。

燦燦さんさんときらめく太陽の日射しが僕の家のテラスを照らす。


母「アルフや。早く起きなさい。今日はあなたの14歳の誕生日。」


僕「『アルフや』って何だよ。普通、そういう日はまずお誕生日おめでとうっていわない?」


母「アルフ。あなたは選ばれし勇者。王様がお待ちかねよ。すぐにお城にいってらっしゃい。」


僕「は?」


母「アルフ。母さんはあなたにずっと隠していたの。実はあなたの父、スクエルは魔王ホロボスを打ち倒した伝説の勇者。ホロボスをった後、その手下にさらわれ、命を落としてしまったの。つまり、あなたは勇者の血を引くみちびかれし者。」


僕「は?いつも寝転がって漫画ばっかり読んでた父さんが、勇者のわけないだろ。」


母「あなたが見ていた父さんは世を忍ぶ仮の姿。本当の父さんは、勇猛果敢ゆうもうかかんで、勇ましく力強く決断力のある、素敵な人物だったの。」


僕「同じ意味だよね?」


母「とにかく、そういうわけで、お城にいってらっしゃい。」


僕「どういうわけだよ。いやだよそんな使命。僕は普通に学校に行って友達と遊びたいんだ。」


母「そうはいかないわ。あなたは選ばれし者。この運命を変えることはできないの。」


僕「だったら僕が生まれた時にそれを言ってくれ。だいたい、導かれたのか選ばれたのかどっちなんだよ。」


母「アルフ。まだお城にいく決心ができないのね。わかったわ。じゃあ、今日はもう疲れただろうから、2階のベットでゆっくり休むといいわ。」


僕「もともと僕の部屋だし。」


母「アルフ。まだお城にいく決心ができないのね。わかったわ。じゃあ、今日はもう疲れただろうから、2階のベットでゆっくり休むといいわ。」


僕「母さん?」


 僕は一旦2階のベット(部屋)で休み、改めて下に降りて母さんに話しかけた。


母「おはようアルフ。まだお城にいく決心ができないのね。わかったわ。じゃあ、今日はもう疲れただろうから、2階のベットでゆっくり休むといいわ。」


僕「……」


 僕は仕方なしに家を出た。けど、城に行く気はない。そもそも一般家庭の僕が城に行って王に謁見えっけんするなど恐れ多いし、そもそも僕や父さんが勇者やその子孫なんて話、急に信じられるか。

 

 僕は町の外へ出ようとしたが、どういうわけか変な効果音とともに身体が押し戻される。


僕(ん…??どうなってるんだ??)


 何度やってもダメだ。仕方ない。町中へ戻ろう。


ヨーボ「おぉ、アルフや。ちょうどいいところにきた。このわしを、お城まで連れて行ってはくれぬかの。」


 ヨーボの爺さんは、時々僕に「エッチなほん」の使い古しをプレゼントしてくれる優しい爺さんだ。爺さんの頼みは、断るわけにはいかない。


僕「もちろんだよ。ほら、荷物よこしな。」


ヨーボ「おぉ、助かるのぉ。これを、王様に届けたいんじゃ。」


 僕は風呂敷に包まれた大きな荷物を受け取った。


僕「お安い御用だよ。」




◆◆◆


―王の間―


僕「王様。ヨーボのじいさんを連れてまいりました。」


王「ヨーボ、ご苦労じゃった。」


ヨーボ「いえいえ。」


王「アルフ。よくぞまいった。昨今さっこんの我が国の情勢はお主も知っておろう。世に蔓延はびこ諸悪しょあくの根源、魔法ホロボスの手下、悪の四天王…」

僕「えっ!?ちょっと待って」


王「……」


王「……であるザンコック・サイアック・キョウアック・ジャアークの魔の手がついに我が国にも忍び寄り…」

僕「待てってば。ヨーボ、俺をだましたな!?」


ヨーボ「フォッフォッフォ。よく気づいたの。お前さんが勇者の分際ぶんざいで旅立ちたがらないと聞いたのでの。」


僕「…!?絶対使い方おかしいだろ。」


ヨーボ「今すぐ旅立てば王様からじきじきに500ゼニーがもらえるぞ。5・4・3・2・1…ブブーッ、残念。」


僕「勝手にカウントダウンするな。」


ヨーボ「もう一度チャンスをやろう。5・4・3…」


僕「たかだか500ゼニーのために命を危険にさらすなんてできるか。」


王「お主は世界を見捨てる気か。」


僕「じゃあ王様がいけよ!!」


王「わしは治世で色々と忙しいのでな。勇者の血を引くお主のほうがこの任務にうってつけじゃ。」


僕「いやだ!!帰る!!!」


 王の間を出ようとするが、入り口で待機していた兵士が道を塞ぐ。


兵士1「王様がお待ちかねです。」


 右に移動するもまたもや兵士に道を塞がれる。 


兵士2「王様がお待ちかねです。」


僕「地獄か!!!!」


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