帝国男爵家令嬢のモノローグ

第1話 天命歴1850年

──────此処は、我々が生きる世界とは異なる運命を辿る異界。一つの大陸に二つの大きな国と様々な小さな国が存在している。

一つ目は、『黎命帝国』。

大陸の東側に位置し、その名の通り皇帝を元首とする豊かな土地を多く持つ。その独特の文化は後に、西側諸国に大きな影響を与えることになる。

二つ目は、『薄命王国』。

大陸の西側にあり、黎命帝国よりも歴史は浅いながらも一時期は文明が一番進んでいた。その強大な軍事力で西側だけでなく、東側までも警戒する程。

そんな強大な二つの国が争う時代があった。一世紀後に、『天命戦争』と呼ばれる、とても大きく、世界の命運を左右する、これ以上無い被害を出した暗黒の世界だった。

これから語るは、その戦争から百年と三十一年が経った、治世での話である。