君が好き。
帷
出逢う
私はあなたを愛しています。それが私の幸せです。
私と同じ誕生日の、マリーアントワネットの言葉であり、私の一番好きな言葉でもある。
それは中学2年生も終盤となり、落ち葉が目立ち初め、最年長学年への進学を楽しみにしていた季節の事だった。
学年中がなんだか騒がしくなるこの頃に、私は1つの恋をした。
きっかけなど覚えていないが、きっと些細な事だったのだろうと思う。だって相手は、到底結ばれることの無い人なのだから。
「今日は居るかなーー」
私の1日は、朝、あの人に会えるかの賭けからはじまる。朝乗る32分着の電車。一斉に乗り込んでくる乗客にまじって、たまに乗り込んでくるあの人。直ぐに気がついてしまう自分が憎らしくも、愛らしいと思う。
居ないからと言ってめげることは無い。朝の電車は、会えたらラッキー位の、そんな軽いもの。
でもこの時間の僅かな時間に賭けて、私は今日も待ち合わせの10分前に、電車に乗る。
「百合ー、おはようー!」
10分後の電車で来る友達を出迎えて、挨拶をする。
「絆那おはよー!今日はいたー?」
「いなかったよおお」
いつもの会話。百合にとっては、この会話はデフォルトで、あの人が居るか居ないかに、焦点を置いていないのだろうなあ。
改札を通り抜けた百合と合流して、登校しようとした時…後ろに見えた…居た!?
「ねえいたんだけど!?」
「え!?どこどこ!?!?」
大きな声で百合を叩くと、運悪くバッチリ目が合ってしまった。…気まずい。
「おはよう…」
無言でペコリと頭を下げられ、思わず同じことを返す。彼女は、横を無表情で通り過ぎると、同じ制服の人でごった返している、人混みの間を凄い速さで歩いていった。
「ねえー、碧依ちゃん、話しかけなよ!」
「絶対無理だよ…」
一匹狼の擬人化こと、須藤碧依。クラス1の優等生であり、冷たい人であり…私の好きな人でもある…。
この恋、成就させたい!
君が好き。 帷 @tobari_mga
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