秘蜜の花塔と五つの庭 ~ 百合ハーレムが完成していたのに、気づいていなかったのは私だけ ~

水鳴諒

第1話 塔の成り立ち


 魔導戦争にてヒトという種を絶滅させるための古代兵器を魔族が使用した結果、人間の女性は絶滅寸前に追い込まれた。しかし無事に戦争に勝利した人間達は、女性を保護し、女性だけの“塔”で彼女達を守った。


 その内に、同性妊娠魔術が発明され、男性は男性同士で結婚して子供を作るようになった。だが何故なのかその魔術だと女性は生まれてこない。


 結果、地に満ちているのは男性のみとなった。

 女性は塔で保護されたままである。しかしこのままでは、やはり女性は滅びてしまうということで、女性同士の妊娠魔術を試される結果となったが……何故なのか、女性同士では子供が生まれてこなかった。試行錯誤をした人類が発見したのは、女性の卵子と男性の精子を魔術で人工授精した場合は、女性が生まれてくると言うことだった。これはどうやら、絶滅兵器の後遺症のようだった。


 女性は保護しなければならない。それが、種族のためである――と、いうことで、女性は“塔”で今も守られている。そして毎年人工授精が試され、数少ない女児が生まれた場合は、塔に迎え入れている。


 その女性達であるが、一つの魔術技術に到達した。

 不老長寿魔術である。

 元々不老研究は、美に熱心な女性魔術師の間で盛んではあった。だが、塔で女性という存在を専門的に研究していた魔術師達は、女性に限って、なんらかの事故や、不老長寿の技術でも太刀打ちできない病気に罹った場合を除いて、死なないようにする技術を発見した。


 すると女性達は、数を増やさなくても減ることがあまりなくなった。

 その上、寿命ある男性達よりも、歴史の生き証人のように知識を蓄えることが可能となり、永続的な魔術研究も可能になり――新しく生まれた若い男性の権力者に助言をする立場になっていった。


 以上の流れから、女性の存在を巷の男性は忘れ、おとぎ話だと考えるようになり、ごく一部の女性の存在を知る男性達は、彼女たちに知識や助言、技術提供を受ける、といった状態になった。ここにきて、ある種、少数の女性が世界を統べるに等しいという状況が訪れたのである。


 これはそんな世界の、女性のみの“塔”の内部のお話である。





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