第14詩 【牛のスケッチ】


海蒼の拡がる浜に居て


君はひどく重たげに腰を動かす


その額を包んでいる無力な空気は


手に触れるものに


優しく


瞳に映るものに


生温い微光を泳がす



日々、刻の中に暮らし


君にしかわからない


無限とも言える多種多様な夢を見る



今日のような暑く焦がれた太陽の下では


君は一人木陰で


身体ごと沈んでいる



眠って岩石化している君めがけて


蝿や小虫が数匹ひっついてくるが


鼻にひっつけば


君は鼻息荒く「ぐんが」と


くさめでもするように顔を歪(ゆが)め



瞳の辺りにひっつく小虫には


耳をはたはたと


蝶の真似でもするような仕草をする



背中がむず痒(がゆ)いときは


一振り尻尾を振るうし


君はいつも眠たいようだしさ



二本の角は


少し恐いぐらいに天を仰いでいる



このままの姿で


いつまで居たとしても


君も陽の沈む頃になれば


立ち上がるだろうし



牛車を引く必要のない君の気分は


星夜の涼しい浜辺の砂内に



ひとり落ち着いて


眠りにつくのだろう






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