第二十二話 冒険者ギルド
冒険者ギルドに到着するまでエルラーネから三回お菓子を買わされてたが、それで機嫌がよくなるのだから安いものだ。
おまけにアマリエの機嫌も良くなっているし、一石二鳥だな。
「ここが冒険者ギルドだね!」
「はい、おそらくそうかと…」
建物はかなり古くて所々痛んでいる所も多々あるが、看板には冒険者ギルドと書かれているから間違いない。
俺は両開きの扉を押して開け、中へと入って行った。
冒険者ギルド内も古く、歩くたびに床板がギシギシと鳴いていて、いつバキッと床板が割れそうで怖いな…。
古ぼけたテーブルに座っているのはガラの悪そうな男達で、俺達が冒険者ギルドに入った時から睨みつけていた。
男達の中から一人が立ち上がり、俺達の前へとやって来た。
「ガキが何しに来たんだ、ここは菓子屋じゃねーぞ」
「冒険者になりに来ました」
「ガキが冒険者だとよ!」
「「「ぎゃはははははははは」」」
いやぁ、大爆笑されてしまった。
まぁ、俺は十七歳になってアマリエの身長は抜いてはいるが、百七十センチくらいで決して背が高い方ではない。
対して、目の前の男は百九十センチ位はありそうな男で、その男から見たら俺は子供にしか見えないだろう。
後ろにいるアマリエは十九歳だが、童顔で俺より年下に見られる事が多い。
それに加えて十二歳のエルラーネはもいるし、その手にはまだ食べかけのお菓子が握られている。
客観的に見て、冒険者になりに来たと思われなくて当然だな。
「あーはっはっはっ、冗談じゃないんですよ。俺達は本当に冒険者になりに来ました」
「おいガキ、魔物と戦えるのか?」
「あーそうですね、多分戦えます。それに、魔物退治だけが冒険者の仕事では無いですよね?」
「そうだが、どの仕事にしてもガキには無理だ!」
「いやいやいや、冒険者には誰でもなれるんですよね?」
「よし!俺様に勝ったら認めてやろう!」
良く分からないが、目の前の男と戦って勝てば冒険者として認めて貰えるらしい。
カウンターの奥にいる、冒険者ギルドの職員みたいな人達も止めてはくれないし、戦うしかないみたいだ。
「ベル、私が…」
「ううん、大丈夫、俺が戦うよ」
アマリエが心配…おそらく俺がやり過ぎないかと心配しているんだと思うが、手加減くらい出来るぞ?
目の前にいる男は冒険者としたらそこそこ強いのかも知れないが、子供の時に戦っていたおっさん達に比べれば大したことは無いと思う。
「可愛いねーちゃんが相手でも構わねーぜ」
「いいえ、俺が相手です」
「よし、お前を倒して、後ろのねーちゃんと遊ばせて貰うぜ!」
男はそう言うと、右拳で俺の顔面を狙って殴りかかって来た。
遅い上に隙だらけだ…。
これならアマリエどころか、エルラーネでも余裕で勝てるぞ…。
ガキだと思って手加減してくれているのなら、それに甘えさせて貰おうと思う。
拳を躱して男の懐に潜り込み、肘をみぞおちに打ち込んでやった。
「っ!?」
男は胸を抑えながら、そのまま倒れ込んだ。
一瞬呼吸が出来なくなって、苦しいんだよな…。
俺も何度もやられたから良く分かる。
まぁ、暫くは息苦しさが続くが死ぬことは無い。
「これで冒険者になれますかね?」
席に座っていた男達に尋ねたんだが、驚きのあまり返事が無かった。
仕方なくカウンターの方に歩いて行き、職員のおじさんに話しかける事にした。
「冒険者登録をお願いします」
「お、おう、三人で良いんだな?」
「はい、三人です」
「名前を三人分教えてくれ」
男を倒したのが効いたのか、あっさりと冒険者登録を済ませる事が出来た。
後ろでは、小声で俺の事や倒れた男の事を話す声が聞こえて来た。
どうやら俺が倒した男は、この冒険者ギルドで一番強い男だった様だ。
元々、冒険者は誰でもなれる職業だから、強い者が少ないのかも知れない。
実力があれば町の警備や貴族の護衛など、他の安定した職業に就く事が可能だろうしな。
魔物とは戦った事は一度も無いが、あの男でも冒険者になって魔物と戦っているのだから、俺に出来ない事は無いだろう。
「ランクは上からS、A、B、C、Ⅾ、Fとなり、最初は誰でもFランクから開始で、これがFランクのカードだ。
無くさないように首から下げておくといい。
仕事は掲示板に張ってあるから、好きなのを取ってこっちに持って来てくれ」
「分かった」
受け取った木製のカードには名前とランクが書かれていて、首から下げられる様に紐が付いていた。
アマリエとエルラーネにもカードを渡し、早速掲示板を見に行く事にした。
「ベル、これなんかどうですか?」
「うーん、馬車の護衛ねぇ。金額は良いけれど、やっぱり最初は魔物を倒しに行きたい!」
「では、村に近くに巣を作っている魔物の退治はどうでしょう?」
「うん、これにしよう!」
アマリエと相談しながら仕事を決め、それをカウンターへと持って行った。
「失敗したら違約金を貰うが、この仕事で良いんだな?」
「うん、お願する!」
職員のおじさんに何度も確認されながらも、無事に仕事を受ける事が出来た。
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