転生暗殺者の借金返済記
よしの
第一章 暗殺者
第一話 余命
「余命三ヶ月です」
「えっ、あれ?あれれー?ちょっとよく聞こえなかったのでー、もう一度言って貰えませんか?」
「余命三ヶ月です」
「…冗談…ですよね?」
「冗談ではありません」
目の前に座る白衣姿の医者は、四角い眼鏡越しにしっかりと俺の目を見て伝えてくれた。
どうやら俺の命は、後三ヶ月しかないらしい…。
俺の名は
だけど、最近ちょーっと疲れがたまって来たかなぁと思っていた所、先輩からも心配されたので、使って無かった有休を取って病院で精密検査を受けたのが二週間前の事。
そして今日、その結果を聞きに病院を訪れたんだが、医者から淡々と俺の余命を告げられた…。
今日まで真面目に生きて来たし、悪い事なんて…ちょっと、ほんの悪戯程度事はしてきたけれど、法を犯すような事はしてきてなかった。
そんな俺がこの若さで死ぬのか?
死にたくない!
俺はモテなかったので彼女と言う存在はいなかったし、当然童貞だ。
残り三ヶ月で彼女…は無理だと思うが、童貞くらいは捨てておきたい!
「北村さん、北村さん!」
「あっ、は、はい…」
突然の事で気が動転し、色々な事が頭を巡っていたので、目の前の医者が俺の名前を呼んでいる事に気が付かなかった。
そして、何故か俺に余命を告げた医者はいい笑顔を浮かべて、俺に話しかけて来た。
「北村さん、安心してください。余命三ヶ月だったのは去年までの話で、今は治療できる薬があります」
「はぁ~、なーんだ、驚かさないで下さいよー。まったく、先生も人が悪いんだからー、あーはっはっはっ」
いやー危なかったね!
俺は運が良い!
薬での治療は大変かもしれないけれど、死ぬよりかはましだよなー。
「ただし、出来たばかりの新薬で保険の対象外になります。
ちょっと高いですが、命には代えられませんよね」
「勿論です!それで、薬の値段はどれくらいなのでしょうか?」
「二億円です」
「またまたー、二度も俺を驚かそうとしても駄目ですよー、あーはっはっはっ」
「二億円です」
「…冗談」
「冗談ではありません」
お薬の代金は二億円…。
俺の年収は三百万円には届かないくらい…。
仮に三百万円だとしても、十年で三千万円だから…六十七年くらい働けば…。
いやいやいや、生活費が無いと死んじゃうから全額は無理!
目の前にいる高給取りの先生なら払える金額でも、一般サラリーマンには無理過ぎる…。
先生も、目の前の
何か良い裏技的なものを知っているに違いない!
「ローンを組めたり…」
「ローンはありません。親御さんか親戚から借り受けてはいかがですか?」
「親と親戚に迷惑を掛けたくはありません…」
「そうですか、あまりゆっくりは出来ませんので、ご家族とよく相談して決めてください」
「…はい」
そんな旨い話は無く、俺は地獄の底に叩き落されたかのような沈んだ気持ちのまま、病院を後にした…。
両親に相談した所で、二億円なんて金は出て来るはずもない。
いや、優しい両親なら、俺の為にどんな事をしてでもかき集めてくれるだろう。
両親にそんな無理はさせられない!
親戚に相談しても両親の耳に入るだろうし、そちらも出来ない…。
俺一人で何とかして、二億円を集めるしかないな…。
ネットで募金を募ってみるか?
有名人ならともかく、無名の俺が募金を募ったところで集まるはずもない。
クラウドファンディング…も支援者に返す物が何も無い。
何かいい手立ては無いのか?
もっと考えろ!
俺の命が懸かっているんだぞ!
気付けば駅前まで来ていて、ふと見上げた所に宝くじ売り場があった!
そうだあれだ!宝くじだよ!
一発当たれば、二億円払ってもお釣りがくる!
俺は宝くじ売り場に駆け込み、財布から一万円…いいや、二万円を取り出した。
「おばちゃん!一等の当たりくじを売ってくれ!」
「あいよ、これが一等の当たりくじ…だといいねぇ」
おばちゃんに二万円を渡し、一等の当たりくじを受け取った!
「あーはっはっはっ!」
これで薬代は何とかなったな!
と、現実逃避をしたのが良かったのか、気分が楽になって来た。
ついでに、腹も減って来たな。
ちょっと早いが、晩飯にするか!
行きつけの料理屋へと入り、いつもよりちょっとだけ豪華な料理を頼み、ビールを一気に飲み干した!
「ぷはぁー、生き返るー!おねーさん、ビールおかわり!」
「はーい!」
酒は良い!
嫌な事を一時でも忘れさせてくれる!
ちょっとペースが早い気もするが、今日くらいは何も考えずに酔いたい。
ビールから日本酒にかえて、ちびりちびりと美味い酒を飲み続けていった…。
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