第15話 存在意義

クラスに戻るが、殴られた顔のあざに気づく人がいないあたり、自分の孤独さを思い知る。自ら選んだ道なのだが。


昼休み明けの授業は、全く身が入らかった。

なぜいつもこうなのか。人間のクズさを中学以来に久しぶりに再認識した。

何がいけなかったのだろう。必死に考えた。


昼休み、彼らを思いっきり突き飛ばしておけばよかったのか。

九条さんとは友達でもなくただの知り合いくらいなのに、なぜここまでされなきゃいけないのか。

そもそも彼女と初めて話したあの日、連絡先の交換や掃除の手伝いも何もかも、本気で断っていればこうはならなかったのではないか。


なんでなんでと脳がぐるぐると目まぐるしく動き回る。


「僕も本当は普通に生きたいだけなのに…」


この瞬間、自分の隠していた心の穴が大きく開くのを感じた。

1人でいることで塞いでいた人と関わることでしか得られない大きな喪失感を。


「何のために生きてるんだろな」

これ以上考えると心が壊れそうだと感じた僕は、残りの授業は机に突っ伏す体制を取り、何も考えないことにした。



学校が終わり家に帰る2時間余りが、今日はとても長く感じた。

家に着くと、この疲れをとるために真っ先にベットに飛び込みたくなるが、僕はその気持ちを必死に抑えてあることをしようとした。

それは小説を書くということだ。


今日あったこと、嫌だった出来事を必死に文に書き連ねる。

そしてそれをラブコメ的展開に落とし込む。

必死に必死に、現実ではありえなかったロマンチックな展開を想像し、書き連ねる。

夕飯も食べず、どんなものにも目をやらずにひたすら執筆する。


気づけば手元の時計は午前4時を指していた。

今回完成したものは今までとは違い、現実で体験したことが話の立体感を生んでいる。

間違いなく過去一番いい作品が出来上がっただろう。

完成と同時に、体が火照る感覚と強烈な睡魔に襲われた。

「今日くらい休んでもいいよね」


書き終えた小説を専用サイトに投稿した後、ベットに横になった。

一心不乱に小説を書き続けていた僕は、スマホに来ていたメッセージに気づくことなく眠ってしまった。

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