第9話 彼女との幕開け
「けど?」
「今日のことは目をつむるし、君が仲良くしてこようとする分には何も言わないことにするよ」
その瞬間、彼女の曇っていた顔が一気に晴れやかになった。
「ほんとに!?仲良くしていいの?」
「まって。ただ、条件がある。」
「条件?」
「クラス内や学校内での会話はなるべく控えてくれるか?それが条件だ」
これが僕が考えた中の最良の案だ。理由としては、彼女が僕のせいで何かあって、その恨みが自分に向けられるのはごめんだからだ。
「え~?じゃあ喋れないじゃん!!」
「それは自分で考えてくれ。仲良くなりたいのは僕ではなくて、君なんだ。」
そう言うと彼女は顎に手をやって数秒間悩み、なにかひらめいたかのように笑顔になった。
「じゃあ、はいこれ!」
そして彼女はQRコードの表示されたスマートフォンを僕の方に向けた。
「連絡先、教えてよ」
困惑しながら画面を開けた僕のスマホを彼女は取り上げ、勝手に連絡先を追加した。
「はい、これでいいね!」
彼女は嬉しそうにスマホを見て、それから僕の顔を真剣な表情で見つめた。
「今日のことはほんっとにごめんなさい。」
「もう許したんだからいいよ。電車乗り遅れたくないからもう帰っていいか?」
「冷たいね~。いいけど…」
じゃあなと振り返り前を歩き出す僕に、彼女は後ろから大きな声で叫んできた。
「これから仲良くしようね~。ばいばーい!」
なぜ周りに何も悟られないようにするために条件を付けたのに、こんな大声で言うのだろうと先に不安を感じつ、僕は駅に向かった。
今日から、極度の人間嫌いの僕と人間好きであろう彼女の物語が幕を開けてしまった。
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