第2話

自転車に乗って、昔のことを思い出した。

お父さんがくれた愛情、最期を看取れて良かったこと。


思い出が全部詰まった、親父のジャージを着て家出する。

セーラー服にジャージなんて変かもしれないけど、

そんな事知ったっこっちゃあない。


お母さんが嫌いだ。


ずっと甘やかしてきた妹の進路も決まり、高校に行けるお金を貯めたところだし。

私はバイトを掛け持ちするのに疲れたから、進路は就職だった。


「親父が死ぬ前に観たいと言ったあの景色を観てみよう」


そう言って、私は。自転車を漕ぐ。

ここから東京までは少し時間がかかるが、どうでも良かった。

12時間は掛かるだろう。計画的な家出だった。

余分に貯めたお金を取られる前に家出をしてみたかった。


その道中、緑色の地下鉄のトンネルを見つける。

私は自転車から転げ回りそこへ辿り着いた。


自転車はガタガタになり、使い物にならなくなった。

黄ばんだリュックからペットボトルの水道水を取り、歩いて行くことにした。


転げ落ちた私は案外、無傷で手の擦り傷程度だった。


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