小さな『勝ち』から始める異世界英雄譚

甘栗ののね

プロローグ

 地響きのような足音と共に無数の魔物の雄叫びが夜を震わせる。


「万魔夜行である」


 白銀の羽毛を持つドラゴンが絶望を告げる。その言葉通り万を超える魔物の大群が津波のように迫りつつある。


 そんな絶望の津波に立ち向かうため平原を走る三つの影がある。


 その一人は邪魔者だった。その一人は余り物としてこの世界に召喚された。その一人は厄介者として扱われてきた。


 三人はいらないものとして扱われてきた。そんな三人が国の危機のために立ち向かおうとしている。


 一人は剣を掲げ、一人は刀を構え、一人はスコップを両手に握り、魔物の大群を迎え撃とうとしていた。


「さあ、いこうか」

「はい、いきましょう」


 絶望が津波となって押し寄せてくる。それを押し返すのはただの人間には不可能だろう。


 だが、三人の目は死んではいなかった。その目は敗者の目ではなかった。


 勝者は次の勝者となり、敗者は次の敗者となる。


 敗者は死に絶え、勝者は生き残る。


 これはそんな厳しい世界で生きる除け者たちの物語。

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