第2話 いつもの休み時間
僕の名前は本田凛夜(ほんだりんや)。
17歳の普通の高校2年生だ。
部活は高校1年の途中までサッカーをやっていたが、訳あって途中でやめてしまったので今は帰宅部。
特徴としては・・・そうだな。
休み時間にトイレから教室に戻ったが、自分の席に座る事が出来なかった。
ここでいう「出来なかった」というのは、心理的な物と物理的な物、両方を指している。
茜達の女子グループが僕の席の周りで会話をしていて座るには押しのけていかなければいけない。
それに一人が僕の席の机の上に座っているではないか。
僕は彼女達と仲良く無い、というか・・・嫌われているような節があるため、話しかけるのにも躊躇してしまう。
「あっはっはっは。でさー」
「え、それはない!w」
「え、キモイキモイキモーイ」
「wwww」
・・・・・
座りづらい。
当たりを見渡すと、みな普通に友人と話したりと、休み時間を楽しんでいる。
僕がここで気まずさを感じているのは、何も彼女達と親しく無いから、というだけではない。
結論、僕はクラスに友達はいない。
いやいなくなったというべきか。
1年の時に仲良かった男子も、同じクラスにいるが、今は必要最低限の事しか口をきかない。
1年までは茜たちのグループとも普通に話していたっけ。
「!」
僕が時間にして1分も無いくらいだろうか。
自分の机から少し離れた位置で立ち尽くしていると、取り巻きの女子と目が合った。
その女子はニヤつきながら周りに小声で話しかける。
「ねぇねぇ」
「どしたー?」
「あいつ、こっち見てるよw」
一斉にグループの視線が僕に集まる。
僕は突然集まった視線に思わず圧倒されてしまった。
「なに!?」
そのグループのリーダー格の女子、川村(かわむら)さんが話しかけてくる。
いかにも気が強そうな顔で、常に周りには男女問わず友達がいる印象だ。
この子はいつも声が大きいので少し苦手。
「そ、そこ」
「はっきり喋れば?」
川村さんに、若干眉間にしわをよせられながら吐き捨てられるように言われる。
怒鳴られている訳ではないのだが高圧的で、その視線は悪意に滲んでいるように見える。
同じグループの茜は無表情で静かにこちらを見ていた。
「そこ僕の席だから、どけて欲しくて」
「じゃあ座れば良いじゃん?」
「だって」
「私たち席には座ってないんですが?w」
「何を言ってるんだ」という表情をしながら川島さんが女子グループ全体の女子に視線をやる。
クスクスと周りが笑い出した。
「もう良いよ。あっち行こ?」
「だねー」
「あ、もう座っていいよ。あっち行くからww」
「コワーイ」
女子達が解散して自分の席に戻って行った。
周りを見るとクラス中の人たちが今のやりとりを横目で見ていたようで、
周りの人と目があうが、すぐ逸らされてしまった。
若干の気まずさを感じながら、授業が始まってしまう時間なので着席する。
「はぁ」
僕が彼女達に嫌われているというのは明白だった。
こんな事になりだしたきっかけは高校1年の途中でサッカーを辞めたあたり。
それから周りが僕と気まずそうに接するようになり、一部の人間は僕に明確な悪意を向けてくるようになって、友達と呼べる人はほとんどいなくなってしまった。
嫌われていても、殴られていたりするわけではない分、僕自身が気にしなければ良いとポジティブにとらえるしかない。
クラスメイトは次の授業の初めに小テストがある事を思い出したらしく、教科書とノートを確認する雰囲気になったので、一旦考えるのをやめて、今は僕もノートを確認する事にした。
♢
「え~君かぁ」
体育の時間。
ソフトボールの授業だったが、雨だったのでペアに分かれて体育館で柔らかいボールを使い、キャッチボールをする事になった。
先生がペアを指定してくれればいいのに、そうはしてくれなかったので、気まずいながらもクラスメイトに声をかけると、そう返されてしまう。
「嫌かな」
「ん~・・・・まぁ良いや」
そういって準備をしてくれるのは、
クラスメイトの山上雄太(やまがみゆうた)君。
元々一年の頃から全くカラミはない。
だからこそ僕も居心地がよくて声をかけやすいのかもしれない。
「ほーいグローブはめるから待って~」
「うん」
僕の学校生活は辛い時もあるけど楽しい瞬間だってある・・・・はず。
少しでも辛い瞬間が減れば良いんだけど。
現実逃避するようにスマホをチラッと見るといつものごとく妹から連絡が来ていた。
今おおっぴらにスマホを弄って没収でもされたら大変なので昼休みに返信するようにしよう。
スマホから視線を移すと女子がネットでしきられた向こう側で、バレーをしていた。
最近は殆ど会話をしていない茜と一瞬目が合った気がした。
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