GiFT~神様がくれた時間~

寅次郎

第1話


1988年9月




夏休みが終わってしまった。


夏らしいことと言えば家族で熱海の花火大会に行ったくらいだ。


恋人じゃなく家族だ、家族。


私は田中さちえ18歳。私は大学へは行かない。他のみんなは当たり前かのように大学へ行くけど、私の家は貧乏だからどこかに就職して家にお金を入れるつもり。最後の夏休みくらいはカッコいい彼氏とバイクで海まで。とかしたかった。私の事をもう少し詳しく言うと、信じないだろううが、私は話した事のある人の心が読めるのだ。これは物心ついた時からだから10年以上はこの特殊な力を秘めている事になる。この話を伝えてあるのは親友のマリだけ。でもちゃんと会話が成立しないと心は読めない。話した人、家族の心も読めるし、男子生徒の心も読める。男子生徒は盛りのついたサルだ。エッチなことしか考えてない。先生達は早く帰りたいとばかり考えてる。その気持ちはわかる。誰だってアフター5を楽しみたいものだ。




しかし残暑というやつはこんなにも暑いものか。


ただ歩いてるだけでかなり汗をかく。


8×4(エイトフォー)が手放せない。


しかし世の中バンドブーム。ジュンスカもユニコーンも大好きだ。


カセットテープが伸びるほど聴いた。


親友のマリがやってきた。


「あの女子グループムカつかない?」


なんか言ってる?


私は心を読む。


「特にマリの事は言ってないよ」


「逆にそれがマジでむかつくわ」


「マリって怒った顔面白いよね」


「さちえまでバカにするの!?」


「冗談だって」








学校の帰り道。




マリとふたりで帰っていた。


グラウンドでサッカーしている坂井君のことちょっといいな。って思ってたけど心の中は色んな女の子の事考えてて、私から興味を失せた。はっきり言ってこの能力は邪魔な時と助かる時が極端だ。


人の心が読めるのはほどほどが良い。私は映像まで見える事がある。幸か不幸かわからないけど最初から話した相手の心が読めるのは、いい時ばかりではない。私の事を口とは裏腹に悪く思ってたりするもんなんだ。








マリとはちょうど反対ホームの電車通学。


私たちはふざけあって互いのホームで電車を待っていた。


しばらくするとマリの電車が来てマリは先に帰って行った。


それからして私の方の電車が来て乗った。


学校では禁止されてるが、このバンドブームでウオークマンが駄目だなんて無理がある。


今日聴いて帰るのは「アンジー」にした。




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