黒兎? 白兎? 4

 お掃除ロボット、ルンタッタ君。

 どこかのパクリ疑惑が発生しそうな円盤の魔術具を、徹夜明けでちょっと目がイッてるお兄様がおかしなテンションでまくしたてるようにその性能を説明している。


 が……、うん、要するに、前世のお掃除ロボットと同じようなものを魔術具で開発しただけだったと言うのが判明したから、もうその長ったらしい説明はいらない。

 構造のすごさとか言われても、わかんないし、理解しようとも思わないから。


 前世のお掃除ロボットよりすごい部分は、階段だろうが何だろうが登ってゴミを吸引し、自動でゴミを捨ててまた動き出してくれるところだろうか。魔術が組み込まれているため、前世の人工知能よりもできることが多いらしい。だがやっぱり、仕組みはよくわからない。


 ……お金持ちの貴族はたくさん使用人がいるから不要かもしれないけど、使用人が大勢雇えない貧乏貴族は欲しがるかもね。ただ、ターゲットを貧乏貴族にするなら値段的なものも考慮しないといけないでしょうけど。


 お父様もお母様も、ルンタッタ君を眺めては「ほーほー」言っている。


「すごいな、パクリだけど」

「ええそうね、すごいわね、パクリだけど」


 まあ、前世にあったものをパクったところで、この世界では関係ない。お兄様が最初に作った発明品と言うことで登録されるだろうから、これが売れればお兄様に特許的な配当が入るだろう。


「この調子で作れば大金持ちになれるんじゃない? パクリだけど」

「パクリパクリ言うな‼ そう言うがな、元のものより性能がいいんだから、オリジナルってことでいいんだよ!」


 いや、性能を上げようとどうしようとパクリだからね?


 徹夜明けのお兄様は少々ご機嫌斜めのようだから、これ以上いじるのはやめておこう。

 性能実験をすると言ってダイニングでルンタッタ君を起動させて、自分は椅子に座ると、でろーんとテーブルの上に突っ伏した。


「とりあえず俺はご飯を食べて寝るから。夜まで起こさないで。マジ眠い……」


 フィリベルトが静かに動き出したルンタッタ君に変なものを見るような視線を向けてから、お兄様のためにお茶を入れてくれる。

 お兄様の分の朝食を運んで来たメイドも、ルンタッタ君を見てギョッと目を剥いてから、何事もなかったように動き出した。


 ……とりあえず驚くけど、驚いた後は通常運転に戻るうちの使用人たち優秀じゃない?


 普通は「なんだこれは⁉」って大騒ぎになると思うんだけど。


 お兄様は緩慢な動作で朝食を食べはじめる。

 ルンタッタ君はこのまま丸一日動かしておいて、問題なさそうなら魔道具研究所に権利登録に行くのだそうだ。


 前世のお掃除ロボットよりはるかに静かに動き回っているルンタッタ君を、ライナルト殿下がわたしの腕の中でちょっとびくびくしながら見つめていた。



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