第23話 ローレベルな男を苦しめる人物の正体
田中は、日々憂鬱に打ちひしがれていた。無理もない。彼の人生は刹那的な快楽に溺れ、その結果、未来の自分から大切なものを奪ってしまったのだ。毎晩、ジャンクフードを貪り、気がつけばゲームに没頭する。夜更かしを繰り返し、朝になれば後悔と疲労感が残るだけ。腹にたるんだ脂肪、鏡に映るだらしない自分の姿を見て、いつも心の中で呟く。
「どうしてこうなったんだ…」
だが、答えは明白だった。過去の自分が、まるで赤の他人のように、何の配慮もなく愚かな選択を積み重ねた結果だったのだ。田中は自分を責める。もし赤の他人が、毎日のようにジャンクフードを食べて、今の自分がそのツケを払って太ってしまったとしたら、どう感じるだろう?きっとその人のことを憎むに違いない。
「そいつのせいで俺がデブになったんだ」と、他人を責めることだろう。
さらに、過去の自分が怠け、勉強を放り出してゲームばかりしていたせいで、いい大学に行けなかった。今の仕事も、やりがいを感じるものではない。毎日がなんとなく過ぎていく生活の中で、田中は心の奥底に抱く不満を抑えきれない。
「赤の他人がこんなふうに俺の人生を台無しにしたら、絶対にそいつのことを嫌うだろう」と、田中は思う。
だが、愚かな行為をしてきたのは他ならぬ自分だった。未来の自分のことを知っていながら、怠惰に浸り、甘い誘惑に負け続けた過去の自分。結果、その責任をすべて未来の自分に丸投げしている。今の田中が、その「過去の自分」に対して激しい憎しみを抱くのも当然だった。
「大嫌いだよ、あの頃の自分なんて」と田中は心の中で叫ぶ。
その過去の自分は、ただ快楽を求めるためだけに大切な未来を台無しにしてしまった。刹那的な満足を得るためだけに、健康な体も、安定したメンタルもすべて犠牲にしたのだ。田中の頭の中には、ひとつの言葉が浮かぶ。
快楽殺人者。
そう、あの頃の自分は、自分から最も大事なものを奪った犯人だ。彫刻のような肉体も、強靭な精神力も、未来の成功もすべて奪っていった。過去の自分は、刹那的な快楽を追い求めた結果、今の田中を苦しめている。そんな自分に対して嫌悪感を抱かずにはいられない。
田中は、これからどうすればいいのか分からない。過去の選択が彼を今も苦しめ続けている。快楽に溺れた結果、彼の未来はいつまでも憂鬱な影に包まれているのだ。
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