第16話 ハイレベルな男とローレベルな男の就寝前ルーチン
有馬にとって、就寝前のルーチンは1日を締めくくる儀式のようなものである。筋トレ後の食事をしっかりと取り、入浴へと向かう。入浴は、温かいシャワーとコールドシャワーを交互に行うことで、全身をリフレッシュさせる。冷水で身を清めると、まるで朝のようなエネルギーが再び体内に溢れ出すように感じる。この感覚がものすごく気持ちいい。まだこれほどの力が残っているのか、と驚くこともしばしばだ。
「俺は何でもできる。このまま時間を積み重ねていけば、どこまでも成長できる。」
彼は、空いた時間を無駄にはしない。ギターやピアノを引き、時には動画やゲームを楽しむこともある。しかし、くだらないSNSには今年に入ってから一度も目を通していない。悪影響を受けたくないから、見る必要がないと決めている。ポルノも見ない。オナ禁は有馬にとってライフスタイルそのものだ。オナニーをするくらいなら、実際のセックスを楽しむほうが生産的だという発想だ。彼にとって、自分の人生が何よりもドラマチックなのだから。
壁に貼り出された日々の成果を眺めて、今日もまたひとつ積み上げたことに満足して頷く。しかし、求めていた結果が得られていないときや、現状が変わっていないと感じるときは、その成果表を睨みつけ、自分に怒りをぶつける。
「もっとできるはずだろ。明日はひとつでも多くのことを成し遂げろ。」
月に一度だけ株価をチェックするが、それ以外の日は23時には必ずベッドに入る。朝、きれいに整えたベッドが自分を待っている。すべてを解き放つヌード睡眠は、まさに王者にふさわしい眠り方だ。これは自信がなければできないことだと、有馬は確信している。
「俺は上位1%の男なのだ」と、その自信に満ちた思いを抱きながら、有馬は深い眠りに落ちる。
一方、田中の就寝前は毎晩同じルーティンで始まる。まず、今晩のおかず探しだ。スマホを手に持ち、右手を上下にシコシコと動かしながら、かれこれ1時間以上ポルノサイトを巡っている。
「一体、この生活を続けて、どこに向かっているんだろうか。どこにたどり着くというんだろうか?」
そんな疑問が頭をよぎるが、それに対する答えを見つけることはできない。彼は、最悪な気分で眠りにつき、そのまま最悪な夢に引き込まれる。夢の中でさえ、彼は貧乏な自分を見ている。
「なんで俺って夢の中でも貧乏なんやろう」と、田中は夢の中でさえ落胆する。
それでも、彼は自分が下位1%の男であることを認めたくない。自己嫌悪と現実逃避の狭間で、田中は今日もまた同じ場所に立ち止まっている。何かを変えようとする意志もなく、ただ無為な時間を過ごし続ける。
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