第4部 再来日と裁判の結果 (1 続き)(経済状況・再来日の決心)
第1章の続き
ブラジルの経済状況
1994年ブラジルは、インフレ抑制へ新通貨〔1レアル=1ドル固定〕という8度目の正直を狙った政策をとった。月間40%を超す慢性インフレにあえぐブラジルで、インフレ抑制を狙って新通貨が1993年8月に導入されたばかりだが、過去12カ月で4,800%という記録的なインフレで、1993年9月初めに1ドル=100クルゼイロ・レアル」だったのが1994年6月30日には2,750クルゼイロ・レアルにまで低下した。
1日約2%ずつ価値が減っている状態で、紙幣の単位も1,000 5,000 10,000とゼロが膨れ上がるばかり。当初の紙幣は紙くず同然となった。
新通貨導入は政府が昨年末発表した経済安定政策、レアルプランの最終段階である。今回はドルの信用力を借りて実質的な価値を持つ新通貨を導入することでインフレ経済を根本から体質改善するのが狙いだ。
再来日の決心
労災はまだ下りないので働かなければ食べていけないし、一夫の妻とその子たちの当面の生活費を稼がなくてはならない。日本も昨年あたりから不況の波が寄せてきて、どの企業も雲行きが怪しくなったと聞く。そのような中で職が見つかるだろうか。「ママ、もう日本には行かないで。何とかやっていこうよ」と二郎や真由美が引き留めてくれたけれども、一夫の無念さを思うとジッとしてはおれなかった。労災の件は日本政府だから約束を違えることはないだろうと思っても、現にお金が入らないから不信感も出てきた。
一夫が亡くなり久子が働くのをやめて、ブラジルに帰ってきてからの暮らしはますます大変になった。
大学を卒業し貸衣装店を始めた二郎の事業もままならず、ともすれば挫けそうだった。
労基局で労災の件を確認するため、 ’政府としても黙っているわけにはいかない’ と様々なバックアップをして下さったブラジル大使のオーランド氏に心から感謝しつつ、裁判の結果を確かめるために、久子は再度日本に行く決心をした。期間は不明だが一時も休まず働いてお金を稼がなければならない。 (第1章 終)
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