おなら放出マシーンで鬼ごっこしたら最悪な結果に終わりましたwww——アラバキ施設内鬼ごっこ短編集

沼津平成

第1話 おなら放出マシーンで鬼ごっこしたら最悪な結果に終わりましたwww

      序 変な受付

「はい。あなたは『須賀川卓也すがかわたくや。』さんでよろしいでしょうか」

「はい。——てかなんで語尾に句点付けるんでしょうか」

「あ、ついてなかったですか? これは申し訳ございません――」

「あのー、僕をどっかの芸人と同じようにはしないでください」

 そういって、若い青年はあたりをぐるりと見まわした。

「——須賀川とか、ニンノ賛平とかは実は偽名なんです」

 思いつめたように、須賀川はいった。茶肌に青い瞳の関西男は、くるんとした髪の鈴のような受付嬢が目を見開くのにもかまわずにいった。

 

 目を見張る経歴を青年はしていたのである。


      1 青年の話


 青年は「声でバレるかもしれない。」と紙に書いた。そして受付嬢がうなずいたのを見て、満面の笑みを見せると、紙を取り出して、話を始めた――。


「ぼくたちは、アシマという国の国王でした。アシマというのは、ご存じかもしれません。北アラバキ諸島から0.3光年ほど離れた小さな星に浮かぶ島です。地球の真反対にある――。噂だけでも、聞いているかもしれません。」

 受付嬢・かりなはアシマを思い出していた。かりなの脳内の検索小窓に、「アシマ」から、須賀川青年の話を続けていく。

「話を変えて、ぼくたちは地球出身のが何人かあります。ぼくもそのひとりで、あとは地球出身のもうひとりの空想から、現実に出てきたものになります。」

「へぇ、そんなのがあるんですねぇ。」かりなもたのしくなって紙に書いた。「そんなものがあるのか」と驚いたのだから。


「ええ、あります。」と青年は答えて、手をとめた。かりなのほうを向いて、気まずそうにした。「ぼくたちはほかにもゆうにウン百の偽名を作ってきました――。中でも一番有名なのは沼津平成、佐久間正三。尤もこの二人は地球出身だから、わざわざ偽名を名乗らなくてもいいんですが」句点を付け忘れるほどに、佐久間正三は焦っていた。腕時計に目をやると、「まとめの言葉に入ります、」と紙に書く。きれいだった字にも焦りが現れた。

「アシマから旅してきた僕たちは盆地を見つけました。開拓して『アラバキ』と名付けました。」

 話は急ピッチで進んでいく。

「周りの国々からたくさんの称賛を受け、人工の星を作ると評判の業者がアラバキ星をつくります。地球に近かったので地球からの移住者もたくさんになりました――。こうしてアラバキは独自の文明を築いたのです。」

 かりなもやっと思い出した。

「すると、あなたは……?」

 もう左手の親指にたこができた。声を出すことにした。

 青年は、また笑顔を見せた。左手はかりなほどではないかもしれないが、かなり痛そうだ。それでも青年はまた紙に書いた。

「はい――。こりどうです。国王4人、側近1人、この六万問円で、よろしく!」


      2 金を捨てる男たち


 間もなくして、テツ王、ハル王の地球勢がやってきた。旅のお供で出会った水上青年とJ吉少年(それぞれ側近と王)も加わってほれぼれするようなメンツになる。

「六万問円はあげたの」

 テツがきいた。こりどうがうなずいた。

「じゃ、僕からも謝礼で。三千円――三万問円」

 ハルが左手を出す。

 かりなも元日本人だった。だから円が懐かしかった。けれども、今は問円アラバキドルの時代だ。なにせよここは独自の文明を築く「アラバキ星」なのだから。

「じゃ、僕からも」テツが百万問円をだした。そしてかりなに紙をねだった。紙にこう書いた。きれいとも汚いとも言えない字で。


——アラバキには最低限の法律しかないから、年収二百万円以下か、一千万以上はお金のコピーが認められているんです。


 こりどうもつけたす。


――けれどもほとんどは二百万一円以上九百九十万九千九百九十九円以下です。


 ハルがしゃべった。


「だから、ほとんどは、無理なんだ」

 

 テツが続ける。


「でも、やっていいかな」

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