第4話 プレゼント

「彼からもらった指輪、捨てるべきだと思う?」


 美海から言われて、捨てるくらいなら売れば?と思ったが、そういうことを言いたいんじゃねんだよな、って、知能で処理をする。


「私はモノに罪は無い派だからつけちゃうけど、捨てたいの?」


「見ると思い出すから」


「羨ましい。いい思い出がたくさんあって」


「凛はそうならないの?」


「ならないよ。そのモノが、きれいとかかわいいだけで、何も思い出さない」


「クールだね」


「間違いなく」


「ずっと持ってたら新しい出会いがないかなと思って」


 そんなことはない。元カレのアクセサリーだろうが服だろうがラブグッズだろうが、持っていても新しい彼氏はできるし、なんなら二股も三股もできる。


「美海ちゃんは一途でいい子だから、いずれちゃんとした人に巡り会えるよ」


「そうかなぁ……」


「とりあえず女と付き合いたいって人もいるし、本当に素敵な人に出会いたいって人もいるから、真剣に彼女探してる人が美海ちゃんに出会えたら幸せだと思うよ」


「だといいんだけど……このまま一生ひとりだったらどーしよ!」


 ないよ、ないない。美海ちゃん、女の平均みんな超えてっから。美海ちゃんが好きな男が近くにいないだけ。美海ちゃんは選ぶ側なの。


「凛は、彼氏とうまくいってるの?」


 朝陽とは付き合っていないが、彼氏がいないと言うと面倒くさいので、朝陽的な存在の彼氏がいることにしている。


「普通だよ。あっちも忙しいし」


「凛は彼氏と喧嘩しないの?」


 しないな、どの彼氏とも。飽きたり、合わなくなったら別れるから。


「しないよ。私が子どもっぽいから、あっちが愛想つかして振られちゃう」


「そうなの? 凛は面白いし優しいから、別れるきっかけが凛って、なんかイメージつかない……」


「長く付き合うと、粗が見えてくるよね」


「粗かぁ……。言ってくれれば直したのに」


「言われる都度直すの面倒くさくない?」


「でも……急に別れを切り出されるこっちの身にもなってよ」


 そこまでして付き合いたいなんて、よっぽどいい男なんだな。


「次は徹底的に相手の好みに合わせたら?」


「できるかな? あたし、鈍臭いんだよね」


「限界までやってやっぱり無理、ってなったら諦めて別れたら?」


「無理してたら続かないよね……。でも今のあたしで付き合ってくれる人いるのかな……」


 そう言いながら美海は半年後に彼氏ができて、間もなく結婚して、子どもも生まれた。旦那さんはいかにも優しい人で、美海もこの時から何一つ変わらない優柔不断で鈍臭くて優しい美海のままだ。

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