いわゆる男女比が偏り貞操観念が逆転した世界(仮)
東雲
第1話コミュ症オタク、転生する
男女比が偏った世界に転生する話を知っているでしょうか?僕も漫画や小説では見たことはありましたが、まさか自分の身に起こるとは思いませんでした……
その日、僕は地震のような激しい揺れで目を覚ました。結構大きな揺れのように感じたけれど、部屋のものはタンスやテレビはもちろん、本やCDすら倒れていない。
気のせいかと思い僕は二度寝してしまった。あの時二度寝しなければ少しは部屋の異変に気づいたかもしれないのに。
二度寝から覚めて顔を洗い、パジャマを着替える。いつも通りの日常。
いつもと違ったのはちょうど朝食用の食パンを切らしていたため、コンビニに行ったことでした。
「な、なんか変……」
そう、なんか変なのだ。普通に歩いているだけで通行人がチラチラとこちらを見ている。
ど、どこか変なのかな?
寝癖がついている?目つきが悪い?服が変?
元々内気で、コミュ障全開な僕はその視線に耐えきれずそそくさとコンビニに入った。
「いらっしゃー……せ?」
無気力な挨拶をしようとしていた店員さんが僕を見て固まった。
うぅ、やっぱりどこか変なのかな?
早く買い物を済ませて帰ろう。
手早く食パンと牛乳を持ってレジに向かう。
しかし、先程無気力な挨拶をしていた店員さんは何故か、なかなかレジを打とうとしない。
「あ、あの……。まだですか?」
「え?あ、あ〜…すんません」
頑張って声をかけると店員さんはレジを打ち出した。
業務に支障をきたすほど僕の格好は変なのかな?だとしたら恥ずかし過ぎる。早く帰りたい。なのになかなか商品をレジ袋に入れてくれない!何でですか!
「あの、は、早く袋に入れて貰えますか…」
「は?私のタイミングがあるんすよ。男の人が店に来ることなんてないんだから少しでも長く対応したいに決まってるっしょ?」
こ、怖いいいいい!
すごい勢いで言い返されました。
あまりにも怖すぎて後半何て言ったか聞き取れませんでした。
こ、こうなったら……
「あ、あの!やっぱりそれいらないです、失礼しました!」
「え!?あ、ちょっと!!」
逃げるしかないよね?
無我夢中で家まで帰りました。朝ごはんは我慢するしかないなぁ。自室に戻った時に僕はやっとこの部屋の違和感に気づきました。僕は音楽が好きで、部屋にはCDがジャンルを問わず並んでいます。しかし、そのCDはどれも見たことの無いものになっていたのです。アーティストも知らない人ばかり。もちろんこの人たちのCDを買った覚えはありません。でも、CDや本の並べ方などで自分の物だと確信できる不思議な感覚に陥ります。
そして、もうひとつの違和感に気づきました。
CDのアーティスト名や本の著者名が全て女性だったんです。
それから、テレビやネットで情報を集めた結果、俗に言う男女比が偏った上に、男女の貞操観念が真逆な世界にいることがわかった。
「つ、つまりあの店員さんや、通行人がジロジロと見てきたのは、僕が男だったからってこと?」
だとしたら納得です。この世界の男性はただでさえ人数が少ない上に、滅多に外出せず、外出したとしても護衛官と呼ばれるいわばSPのような人達がそばにいるのが普通なんだとか。
そんな中1人で歩いてる男がいたら、最悪襲われるかもしれないとネットに書いていました。
こ、怖い。襲う襲われるだけでも怖いのに、知らない人に声掛けられたり近づかれたり、触られたりなんて、コミュ症の僕には絶対に耐えられない・・・!
今後は極力外出を避けた方が良さそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます