第10話

暗闇に、堕ちた。


そんな感覚。


もう、這い上がることなんてできない。

自力で這い上がろうとも思わない。


「...痛い、」


薬に侵されて暴れたぼくの身体は、

いつの間にか傷だらけになっていて。


他人に付けられたものと同じはずなのに、

自分を愛せたとは微塵も思えなかったんだ。


「なんで。」


「なんで、あのまま。」


「なんで、あのまま、死なせてくれなかったの。」


今まで嬉しかった身体の傷も、

自傷が混ざったことで気持ち悪くなった。


こんな身体で、誰が愛してくれるんだ。

こんなぼくを、誰が愛してくれるんだ。


赤黒い傷痕も、

よく見ると膨らんでいるケロイドも。


「きもちわる、」


あんなに愛された証に感じてたのに。

あんなに自分から求めたものなのに。


治さなきゃ、愛されない。

治さなきゃ、戻れない。


...戻る。


戻る?


あんなにも他人に縋る過去に?

あんなにも自我が無い過去に?


あんなにも虚像に塗れた過去に?

あんなにも真実が隠れた過去に?


汚い身体。汚い思想。


ああ、治さなくても。

いや、治したとしても。


ぼくはこんなにも汚かった。


傷が無くても汚くて、

考え方も汚いなら。


ぼくはどうなったって、

誰にも愛してもらえないんじゃないか。


「...あ、そっかぁ。」


そして、気付く。


気付いてしまう。


「結局、偽りでしかなかったね。」


ぼくの生きてきた軌跡は、

全部が全部、偽りのモノばかりで。


ぼくはだんだんと死を望むようになった。

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愛と、闇の、深淵に。 シノイロ。 @Shinoir_o

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