第6話

ぼくは、きみとの関係を切った。


もう、きみの愛は、

ぼくにとって必要なくなったから。


きみは、なぜか、泣きそうな顔をした。

ぼくは、それを、笑って突き放した。


きみのせいで、ぼくは。


…いや、なんでもない。

さよなら。


でも、でもね。

あなたとの関係は切れなかった。


あなたは、ぼくの恩人でもあるから。


独りになって、

寂しくて死にそうな時に。


ぼくに、愛をくれて。

ぼくに、寄り添ってくれた、あなたを。


ぼくは、突き放せなかった。


一度、一線を、超えたから。

もう、歯止めなんて効かなくなった。


あなたは、ぼくを求めてくれて。

ぼくも、あなたで寂しさを埋めた。


でも、終わったあとに残るのは、

虚しさばかり。


当たり前だよ。

だって、これは、偽りだから。


「愛してる。」

「嘘つき。」


わかってるよ。

あなたと、ぼくは、結ばれない。


ただ、この身を委ねて。

ハジメテをあなただと思うことにした。


あれは、真実で。

これは、虚像だ。


ぼく、もう、真実なんか要らない。

虚像で夢を見れるなら、それでいい。


夢の中なら、偽りの中なら、

ぼくを傷付けるひとは居ないから。


あなただけじゃ、満たなくなった心。

身体を求める誰かの元に。


ぼくは、虚像を求めて。


「ね、嘘でいいから愛して。」


気持ち悪い。

笑っちゃうくらい。


ぼく自身が、気持ち悪くて、

反吐が出る。


ねぇ、君は何を求めてるの?

ねぇ、貴方は何が欲しいの?


なんでも、あげるよ。

君に、貴方に、全部あげるよ。


だから、ね、

だから。


「ね、愛してよ。」


壊れる。

音を立てて。


弾ける。

音を立てて。


ああああああああぁぁぁ。


また今日も。

また明日も。


明後日も、1週間後も、1ヶ月後も。


ずっと、ずっと。

ぼくは囚われたままなんだろうね。


だって、こうしないと。

誰もぼくを愛してくれないから。


あは、あはは。


楽しい。嬉しい。熱い。


もう何もかも忘れて。

快楽だけに染まっていたい。


行為中、向けられる愛が心地いい。

行為中、囁かれる愛が気持ちいい。


リストカット?

してもいいよ、ぼくの身体に。


首絞め?

してもいいよ、ぼくの首で。


キメセク?

してもいいよ、ぼくの薬で。


拘束してもいいし、

目隠ししてもいいし。


なんでも、ぼくが、受け入れてあげる。


だから。


だから。


だから。


だから。


もっと。


もっと。


もっと。


愛して。


もっと。


壊して。


もっと。


もっと。


お願い。


もうなにも、考えたくない。


「キミはどうやってぼくを愛してくれるの?」

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愛と、闇の、深淵に。 シノイロ。 @Shinoir_o

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