第4話

身体が、熱い。


気温とかじゃない。

部屋が暑い訳でもない。


ただ、体内に残る熱が、

異様に気持ち悪くて。


ぼくは、目を覚ました。


瞬間、実感する。

奪われたんだって。


部屋を充満する、そういう匂い。

身体に残る熱に、余韻で揺れる頭。


あ。


ああ。


記憶の中、頭に残っているのは、

名前も知らない、君の顔。


意味、わかんない。


身体を起こして、立ち上がる。

なんだ、これ。


身体に残った熱が、

気持ちの悪い音を立てて外に出てくる。


寝ていたベッドは、

ぐちゃぐちゃで。


所々に、血がついてる。


せめて、せめて。

きみか、あなたがよかったな。


ぼくの、ハジメテは。

名前も知らないひとに奪われて。


そのまま、消えてなくなった。


ハジメテの相手は、

一生、記憶に残るなんて言うけど。


ぼく、誰かもわかんないんだ。


どんなことをして、

どんなことを思ったのか。


それすら、よく、わかんないんだ。


嫌だったこと、気持ち悪かったこと、

痛かったこと、吐き気が止まらない。


ぼくは、誰もいなくなった、

きみの家で。


勝手に、吐いて。

勝手に、お風呂に入った。


温かい、シャワーのお湯が、

嫌に身体に沁みる感じがした。


ぼくは、これから、

どうすればいいんだろう。


もう、誰も、信じられないよ。


初めて愛してるって言ってくれた、きみも。

初めて理解をしてくれた、あなたも。


結局、求めているのは、

こういうこと、なんでしょ?


逆に、ぼく、

こういうこと、しかできないのかな?


もう、これから先ずっと。


誰が愛をくれても。

誰が理解してくれても。


ぼくは、その人を

信用できる気がしないよ。


どうせ、裏があるんでしょって。

どうせ、全部嘘なんでしょって。


流れ出た熱と、一緒に、

ぼくの心が、冷たくなった気がした。


ぼくは、泣きながら帰った。


ぼくを、無償の愛で包んでくれる、

両親の顔は、まっすぐ見れなかった。


部屋に籠って、ぼくは、堕ちる。


なにもしたくない。

なにも、かんがえたくない。


隠してある、薬の瓶。

ぼくは、中身を全て飲んで。


今日の出来事を、忘れることにした。


ほら、気持ち悪くなって。

また、眠れなくなる。


でも、いま、ぼくが悩んでることは

もう、どうにもならない気がしたから。


息が出来なくて、苦しい。

眠りたいけれど、眠れない。


でも、薬で苦しむ、この状態は、

ぼくにとって、すごく楽に感じた。


まわらない頭で、

ぼくは、今日のことを思い出す。


思い出したいわけででもないし、

考えたいわけでもないけど。


思考を回すことしか、

今のぼくにはできないから。

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