未練無く天に昇っていたが、転生してしまったので邪神と生き甲斐を探す。

@kurukku-poppo

第0話

[はあ~…やることがねぇなぁ…積んでたゲームを全部消化しちまったし…ソシャゲ全部サ終してしまったな。]


(働きもせず戯言を吐いているこの男は稲切いなき幸太こうた、運だけ財を築き働かずに怠惰の限りを尽くす愚かな人間です。)


「へっぐじょひぉ!…誰か噂してんのかな?。」


(この愚かな俗物は強欲そのもの…

[ポテチ食いながらコーラを喉にかっ込むのは最高だぜ〜。]

なんて今も考えていやがります…私だって太ること考えずに食べたいのに好き勝手食ってるコイツは肋骨見えるくらい痩せてやがる…!許せません!なんて羨ま…ゲッフン…愚かなのでしょう!…とはいえ死の宣告によるとそろそろ生活習慣病で怠惰のツケを払う事になる!)


「時が来ればこの陽焔ようえんの女神ヘラトマテス様が断罪してやるわー!あーっはっはー!」


「?? 多分空耳だな…もうやる事やったし…寝るかぁ…昼だけど…」

呑気に一眠りして彼が眠りから覚めた時には既に彼は天に昇っていた。苦しまず死ねたの彼はやはり

幸運であった。


「ヘラトマテス様…今度こそ手順通りに仕事を行いますよ。これ以上癇癪を起こしてはお父様に何と言われるか…」


「アラクネ!この事はお父様には内緒よ!シーッ!こういう人間が改心して勤勉になる訳は無いんだから!あなたが蜘蛛にされたことを未だに根に持ってる様にね!ほら!しっしっ!」


(……まったく…困った物です…)


騒々しい猿の様な声を聞いて目覚めた彼の立つ場所はまるで荘厳な裁判所の被告人席だ。

「なんじゃあこりゃあ…どこなんだよここは…」


「愚かな罪人よ!」


「……えとー…一体何…「貴様の罪はとても重い!」

(………無視?)

「あのーすいやせー「貴様の怠惰な生き方には呆れるばかりだ!」(無視された…)

「あの「労働する事も無く!怠惰で愚かな私利私欲の限りを尽くした大罪…」(また無視された…)

「俺の話全部無「この女神ヘラトマテスが貴様に浄魂の判決を下す!」(また割り込まれた…)


(しかし神様か…通りで上から目線な訳だ…)


同じ内容を繰り返す薄っぺらな説教にうんざりして説教を聞き流していると [ガチャリ]と、ドアノブの音が説教に混じって聞こえた。

突然の訪問者の方を見ると大型犬サイズの蜘蛛が入って来た……


(え?なんだこのバケモン…こいつの部下か…だとしたらまずいなー、絶対聞き流してたのバレたよな…

死んだな…)


諦める幸太を通り過ぎて蜘蛛はヘラトマテスの肩に触れると先ほどまで内容の薄い説教をしていた女神はようやく反応を示した。


「なんの用!?アラクネ!……また小言を言いに来たの?」


アラクネと呼ばれた蜘蛛は女神と会話している。

(どうやら女神様の部下らしい。見事な服を来ているし…)

そして蜘蛛は何かタブレットを女神に見せている。


「あんたの補佐は要らないわ!カンペ出さなくて

いいから!」


「神様ワールドにタブレットあるんだ…」


そして蜘蛛がこちらに向かってきた。


[こんにちは、お客人。]その声は冷たく、抑揚の無い声だった。


「おお…いやまあ女神様がいるなら蜘蛛も喋ったとしても別におかしくはないか…」


[私はアラクネと申します。うちの上司に絡まれるとは不幸でしたね…]  

と話す蜘蛛は名刺を丁寧に差し出す


(タブレット使うし名刺配るとか随分と現代的だな…)


「ども…俺稲切幸太です。ここは一体何なんすか?」


[ここは死者の行先を決める裁判所…冥界の様なものです。そしてヘラトマテス様の遊び場です…]


「私は神よ!子供扱いしないで!」


このうるさい女神様は話が通じなさそうだし、蜘蛛さんに色々聞くか…


「女神様の話からすると俺もしかして死んでます?死んでない筈なんですけど…」

焦りから聞くがアラクネは申し訳なさそう目を反らすだけだった。


「…あぁー…」

 

恐れていた訳では無い、とはいえ死亡した事実に落胆や悲しみが押し寄せる。そして突然の死によって生きていたころの記憶が鮮明に浮かぶ。自分の人生の未練もあるだろう…


(…未練…あれそういえばやってるゲームサービス終了したし、追ってたアニメは最終話まで全部しっかり見たし、趣味にしてたゲームもアニメも

全作品が終わっちまったし…特に現世未練ねえな…)


「…じゃあ別にいいか!」



「「!?」」


[未練とか無いんですか?] 「ハイ…多分…」


「はぁ…やっぱりこんな人間生きていても死んでいても変わらないじゃない」「そっすね…」


「やはり人は神に劣る存在なのね…」


「?人も神もそんな変わらないと思うんスけど…」


「……どうしてそう思うのかしら…!」


(あっ地雷踏んだなこりゃ…でも散々馬鹿にされたし…まあいいか!)


怒りを隠せない彼女に幸太は答えた。


「人も神も見た目そっくりだし女神様は駅に向かう会社員みたいな疲れた表情してるし…」


「ぷっ…ふふ…」

アラクネが笑うのを堪えている、女神様は実際働くばかりなのだろうか。


「だぁれが下っ端社員みたいですってぇ!?」


「そこまで言ってないのに、やっぱ自覚あるんスね。」

どうやら女神様も世界の歯車とされている下っ端らしいという事情があったから自分を憎んでいたのだろう。少し同情して憐れみの目で見てしまう。


「このっ…!クソ人間がぁぁ!!何よその目!」


ブチギレたヘラトマテスがどこからか杖を取り出した。


「いけません!転生権能の使用を止めて下さい!

また面倒事を起こすのですか!?」


「うっさいうっさい!極刑よ!!虚無の世界に

送ってやるわ!!」


(すぐ切れるとこも人間そっくりだな。)


[ああ…なんてこと…また始末書ですか…] 


その時、唐突に幸太の体が浮き始めた。

「うわわ…なんすかコレ…」


「備えて下さい、転生が始まります。」


「もう生まれ変わるのか…早えな」


「ええ、しかも相当辛い世界に。」


「ええ…やだなぁ…やっぱ権力乱用するような神様はまともじゃねえな。」


「黙れえぇぇ!!!」


(しかし…今回は随分と面白い人がいたものです。)


「…貴方を見ていると昔を思い出します…自信に溢れ、恐れを知らぬ蛮勇で神に挑んだ時を…」


「え?アラクネさん?いきなり何話して…「ほんの少しだけ、その旅路への助けを…」


「え?また無視!?…うわっ…!眩しいっ!」

まばゆい光に視界が包まれ、意識が薄れていく。

だが、消えゆく意識の中、細く柔らかな糸の感触が腕に触れた。


[頑張ってください、コウタ…神を恐れぬ人…]


……………意識が消えてから…目を開く。

そこは暗い樹海のど真ん中だった。


「今度はどこなんだよ…」


続く

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