漆黒の由人

刃口呑龍(はぐちどんりゅう)

第1話 政治の世界に打って出るぞ

「まったく、何考えてんだか」


 俺は、1人の男のLINEでの一言に驚き、呆れていた。


「今だと思う。政治の世界に打って出よう」


「そうか、頑張れよ」


「は? 何を言ってんだ? お前もだよ」


 何?


 こいつは何を言ってんだ? 俺も?


「悪いが仕事がある」


「はあ? 何を言ってんだ? 今の世を、日本を救えるのは俺達だけだろ?」


 いやっ、そんなのいっぱいいるだろうが。多分……。


 確かに、今の日本は、物価に比べて、賃金はあまり上がらず。生活が苦しいと言われていた。それなのに、政治を動かしている政権与党の中には、私腹を肥やしている奴の多いこと。まあ、ニュースでも取り上げていたが、あんなの氷山の一角だろうな。そういう腐ったシステムが根付いているのだ。



 なんて、思わず書いたら。


「だろ? だからお前が必要なんだよ」


 あ〜あ、やっちゃったよ。余計な事を言ってしまった。だけど。


「お前とは考え方が違うだろうが」


「だから、必要なんだよ。俺と違う意見をちゃんと言ってくれるからな」


「まあ、そうだけど」


 こいつの考えは、小さな政府。アメリカだと共和党的な考えだった。進歩主義とでも呼べばよいのだろうか?


 政府の経済政策・社会政策の規模を小さくし、市場への介入を最小限にし、市場原理に基づく自由な競争によって経済成長を促進させようとする考えだった。


 規制を緩和し、民間の活力を引き出すことで経済社会の発展を目指す。


 しかし、その一方で、個人の自己責任が厳しく問われるようになり、格差が生じやすくなる。税や社会保障費など国民負担率は低く抑えられるが、低負担低福祉となる傾向がある。まあ、悪い考えでは無いんだが。急先鋒過ぎるのだ。現に……。いやっ、やめておこう。



 ちなみに、俺は、アメリカだとリベラル、自由民主党的には保守本流。基本平和主義者のハト派。


 スウェーデンのようにゆりかごから墓場までの福祉国家ではないが、ある程度、医療保険、介護保険等や、年金などを安定させて、貧富の差の少ない、国家を作りたいなどと、昔は語っていた。


 池田勇人を尊敬していたしね。まあ、現実的ではないのは分かっているよ。財源をどうするかという問題があった。


 なので、意見が違うのだ。


 ちなみに、タカ派は、自由民主党では、鳩山一郎、岸信夫から続く、日本の独立を保つ為に再軍備、強い日本。国粋主義的な主張だった。ちなみに、アメリカだと共和党強硬派的な考えだった。


 そして、あいつの意見はタカ派ではない。もう良くわからないよね。でも、それが政治って言うものなのだ。



 第一、この主義主張だけで政治をやるわけではない。


 例えば、国民に直結する話だと税金だが。国税だと、所得税、法人税、相続税、贈与税、消費税、酒税、たばこ税、自動車重量税などがあり、地方税には、住民税、事業税、固定資産税、地方消費税、自動車税などがあるのだ。まあ、国税は、概ね、財務省が考えるとして、これを増税するとか減税するとかの論議もあるのだ。


 例えば、消費税減税して、足りなくなった財源はどうする。そこで、小さな政府にすれば、新たな財源は必要としない。なんて考え方もあるのだ。



 今、日本は消費税を導入して、法人税を下げて、会社の体力をつけさせようとしている。ただし、その法人税も世界レベルでは高い方で、世界各国から日本に企業が進出するという感じではない。



「はいは~い、お前の情熱はわかったよ。というわけで、詳しい話は、次の日曜な。俊英会の連中みんな来るってさ」


「えっ、全員来るのか?」


「ああ。待ってたんだよ、みんな」


「そうか……」

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