9話 探偵と翼竜 1/2
目を開ける。知らない天井だが、この雰囲気は病室だな。リコが病室の椅子でスケッチブックに何かを鉛筆で描いていた。上半身を起こす。リコが俺の目覚めに気づいた。
知らない男と映画見ていた気がするが、夢だったか?
「おはよう」
「ああ。今西暦何年何月何日だ?」
けっこう無茶をしたし刺されたはずなのに身体が痛くない。だいぶ時間が飛んだかもしれないので確認する。
「西暦二千十年十一月二日だ。それはそうとおはようと言え」
スケッチで布団の上から足をしばかれる。
「おはよう」
「良い子だ」
コイツと結婚した奴はこれの尻に敷かれることになるだろうな。あるいはかかあ天下。
それからウイヒメが缶ジュースを持って帰ってきて、さらに医者がやってきた。
医者は俺の健康体に一通り驚き、全く健康なので帰って良しと言った。
ペンギン行方不明の件は俺の斬撃でレンズ破壊できたらしく解決した。面倒だったのでしばらく働きたくない。ということを考えながら掃除機をかけていると草加がやって来た。
顔色はだいぶ悪い。無理して働いているなと思ったが、一人の社会人が自己の裁量で無茶しているんだろうし突っ込むことでもないか。
「行くぞ」
「おいおい。何処へ行くんだよ草加?」
草加の発言だけだとわかりにくいので、薄羽刑事に解説を求めようと思った。しかし姿が見えない。ソロで来ている。
「時間怪盗が出た。お前たちも現場に来い」
「俺たちのこと時間怪盗専門の始末屋だと思ってない?」
そこに時間怪盗がいると聞けば何処にでも行って殴り倒す。俺の記憶の手がかりやレイジの仇討ちになるからな。だが草加に良いように転がされるのは癪に障る。言葉だけでも渋々感は出す。
「行くよ」
ウイヒメは草加について行くつもりのようだった。
「話が早くて助かる」
草加のパトカーに全員が乗り移動した。
到着した場所はタワーマンションだった。各部屋は賃貸だったり分譲だったりする。
それらに時間怪盗が襲撃し、住人の時間とお金が盗まれたらしい。今この瞬間に時間怪盗が来ているというわけではなく、時間怪盗のよる事件が相次いでいるということだった。
被害を受けた部屋はだいたい高層階で空を飛ぶ時間怪盗らしき人影の目撃情報がある。
飛行を可能にする要素を取り込んでいるようなのは面倒だな。
我々は被害を受けた部屋を見る。住人は時間を盗まれ病院送りになっている。生きても死んでもいない状態だ。
今日襲撃を受けたばかりの部屋らしくまだ鑑識の人間が仕事をしている。
「お前たちならばどのように網をしかける?」
草加が尋ねる。
「質問」
俺が手を挙げる。
「なんだ?」
「襲撃を受けているのはこの近辺のタワマンだけだったか?」
「そうだ」
じゃあこの辺に網を仕掛ければ引っかかるな。
理由は不明だがこの辺で活動している。
「草加さん、狙撃はできるか?」
「任せろ」
作戦はこうだ。俺がこの辺に待機する。草加はこの近辺で一番高い建物に陣取る。時間怪盗が出没したらストリングスになって狙撃する。
タイムレンズ装着者の攻撃は時間加速が適応されるので銃弾も同じ加速率で飛ぶ。
銃弾一発で終わるとは思わないので落ちた相手を俺が叩く。完璧な作戦だ。タワマンの許可が取れれば。
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