プロローグ~諦めた少年~
「異世界転生してぇ~」
少年、
シュンの年齢はまだ16歳になったばかり、青春のただ中にあってなぜシュンは希望を失ってしまっているのか。それには彼の生い立ちが関係していた。
シュンは幼少の頃より体が弱く、病気に侵されては入退院を繰り返す。そんな彼は終には不治の病に罹ってしまった。医者も20歳までは生きられないと言っている。
そんな状況で希望を持って生きることなどできない。だからこそ彼は願ったのだ『異世界転生』を。
異世界転生が出来ればこの病に侵された体ともおさらばできるし、神様からチート能力も授けてもらえる。そうすれば勝ち組同然の人生を謳歌できる。今世は最悪だったのだそれぐらいの贅沢を望んでも罰は当たらないだろう。
「ま~たそんなこと言ってる」
そう言ったのはシュンの病室を担当する看護師だ。彼女も当然シュンの生い立ちから現状まですべてのことを知っている。それでも看護師という職業上シュンのことを励まさずにはいられない。
「加藤さんだって俺と同じ状況になたら、そう思うって。俺の人生はもう詰んだ。だったら来世に望みを託すのみってね」
「それが異世界転生なの?」
作られた笑顔をシュンに向ける看護師。シュンはそんな看護師の態度など慣れたものと言った様子だ。
「そう、異世界転生。早く死んじまわないかなぁ俺、そうすれば神様に頼み込んで異世界転生してもらえるのに」
「もう、そんなこと言わないの!もう少し建設的な話をしましょうよ」
「あのねぇ加藤さん。誰も爆破予定のある建物を建設しようなんて酔狂な真似しないでしょう」
自嘲気味な笑みを浮かべるシュンに、看護師は苦笑い。
「もう、そんことばかり言ってると愛想つかされちゃうわよ」
「いいよ、いいよそれで早く死ねるのなら本望だって。それに、愛想なんてとうにつかされつくしてるっての。だから父さんも母さんも見舞いになんて来やしない」
「それは……」
そこで初めて看護師の素の顔がにじみ出る。憐憫、同情、悲しみ、どちらにせよシュンにとっては見慣れた顔の一つであった。
「あ~あ、早く異世界転生出来ないかな~」
本日数十回目のシュンのぼやき。シュンは病室から外の景色を眺める。
――羨ましい
本当は自分だって生き続けられるのならば生きていたい。自由に外を歩けるのならば歩きたい。けどそれは叶わない。だって自分は病気なのだから。だから
「自由になりたい」
そう願わずにはいられない。
それが盤野盾の一生であった。
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