プロローグ②
探が目を覚ますとそこは見知らぬ場所。雰囲気からして聖堂だろうか?
「一体どこだよここは」
探は立ち上がり周囲を見渡す。しかしあるのは扉ひとつだけ、この場所の手掛かりになるような物は存在しない。そこで探は扉の先に移動しようと扉に手を掛けたその時、
「ようこそ新たな探索者よ」
後方から声をかけられる。振り返るとそこには神秘的な白いローブを纏ったこの世のものとは思えないほどに美しい女性が微笑みをたたえて探のことを見ていた。
「あ……あなたは?」
「私は女神フェイスレス貴方をこのダンジョン街ゴライアスに召喚した者です」
ダンジョン街ゴライアスと言えばダンジョン――アビスホールの付近にある街として有名だ。つまり探は本当にダンジョン探索者に当選したということになる。しかし、
「女神フェイスレスなんて初めて聞いたぞ」
探のダンジョンに関する知識には女神フェイスレスなどという存在は存在しなかった。
探は怪訝な表情を女神に向ける。すると女神はうつむき伏し目がちにポツリポツリと話だした。
「それには理由があるのです。恥ずかしながら私は神としての格が低く太古にあった神々の戦争の際に邪神の手によって魂をダンジョン――アビスホールの最下層に封じられてしまったのです。そのため私は私の魂をアビスホールから解放してもらうためにダンジョン探索者として貴方方人間を定期的に召喚しているのです」
一応自称女神の言うことは筋道がたっているように聞こえる。しかし、探の脳裏には何かが引っ掛かっていた。
「でも、そんなこと初めて聞いたぞ」
「それは邪神の目を欺くためです。先程も言いましたが私は神としての格が低いため、邪神に私の企みが知られると今度は私の魂が消されてしまうのです」
「理由はわかったが、随分と身勝手な話に聞こえるのは俺だけなのか?」
「貴方方探索者には十分な見返りを用意していますし、一応希望者のみを召喚するようにしていますが?」
「それは……確かにそうだが、俺は他の連中とは違って手違いでここに召喚されたんだ。だから俺のことは元の場所に返してもらえないか?」
「まあ、そうなのですね。でしたら早速元の場所に帰っていただきましょう」
女神の言葉にホッと胸を撫で下ろす探。
「すまないなこっちの都合で余計な力を使わせてしまって」
「いえいえ、これくらいのこと何てことありません」
女神はそう言うと探に向けて掌を向けると、探の足元に召喚の時とは比べ物にならないほどの大きさの魔方陣を出現させる。
「来るときとは違って帰るときば随分と大きな魔方陣を使うんだな」
「ええ、一応口を封じなくてはなりませんので」
「邪神の件か?それだったらこんなことしなくても言いふらしたりはしないぞ」
探は女神の言動に小さな不信感を抱くがここでそれを追及しても無意味と判断。念のため少し腰を落として警戒をする。
「いえ、念には念を。一応すべての探索者に行っている処置ですので」
だから女神のことが世界に伝わっていないのかと納得する一方、探は女神の言葉への不信感が大きく募っていた。
「どうでもいいがさっきから口封じとか処置とか物騒な言葉が多くないか?」
そう探が女神に指摘した瞬間。女神はその口の端を大きく不気味に歪ませる。
「本当に貴方は小さなことを気にするのですね」
探は突然の女神の変貌ぶりに言い知れない不安を感じる
「なあ本当にあんたは俺を元の場所に帰してくれるんだよな」
女神はなにも答えない。不気味な笑みを浮かべるばかりだ。
「なあ!何か言ってくれよ!!」
女神はなにも答えない。不気味な笑みを浮かべるばかりだ。
「なあ!!」
その瞬間、探は強制的に転移させられる。それはどこへ?
「ようこそ、アビスホールは新たなる探索者を歓迎いたします……」
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