第15話 ふたりの夢

展示会での成功を経験した後、レニは少しずつ自分に自信が持てるようになっていた。絵を描き、言葉を添えるという新しい表現の方法が、自分の心をもっと自由にしてくれると感じていた。一方、ハルトもレニの成長を見守りながら、彼女と共に歩む未来を思い描いていた。


ある日、カフェでいつものように過ごしていると、ハルトがふと真剣な表情で口を開いた。


「レニ、少し真面目な話をしてもいいかな?」


レニは驚いて顔を上げた。「もちろん、何かあったんですか?」


ハルトは一瞬ためらったが、やがて静かに話し始めた。「俺、これからのことを真剣に考えたいと思ってるんだ。自分の将来、そしてレニとのこれからのことも。」


レニは少し驚いたが、ハルトが言おうとしていることが何か、なんとなく感じ取っていた。彼女も、これまでの二人の時間を思い返し、未来について考え始めていたからだ。


「レニは、これからも一緒にいろんなことに挑戦していくと言ってくれたけど、俺たち二人で何か大きな夢を持つのはどうかな、って考えてるんだ。」


「大きな夢…ですか?」レニは少し緊張しながら聞き返した。


「うん。例えば、二人で小さなギャラリーを開くとか、レニの絵と言葉をもっと多くの人に見てもらえる場所を作るっていうのはどうだろう。俺も何か役に立てることがあれば手伝いたいし、二人で一緒に何かを創り上げることができたら、すごく素敵だと思うんだ。」


その提案に、レニは一瞬驚きを隠せなかった。彼女は、自分の絵を人に見てもらうことでさえ、まだ不安を抱えていたのに、ギャラリーを開くなんて考えたこともなかった。しかし、ハルトの目には真剣な思いが込められており、彼が一緒に夢を追いかけたいと本気で思っていることが伝わってきた。


「ハルトさん…それはすごく大きな夢ですね。でも、私にそんなことができるんでしょうか?」


ハルトは優しく微笑みながら、レニの手を取った。「もちろんできるよ。レニには絵を描く才能があるし、言葉で人の心に触れる力もある。それを世の中に伝えるための場所を、俺たち二人で作っていけたらいいなと思うんだ。」


レニは少し考え込んだが、やがて小さな声で答えた。「確かに、ハルトさんと一緒ならできるかもしれません。今までは自分一人で何かをするのが怖かったけど、こうしてあなたと一緒にいることで、少しずつ前に進むことができたから…」


「そうだよ、二人でやるからこそ、大きな夢に挑戦できるんだ。もちろん、すぐにできることじゃないかもしれない。でも、少しずつ準備をしていけば、必ず叶えられるはずだよ。」


レニはその言葉に勇気をもらい、やがて微笑んだ。「私、やってみます。ハルトさんと一緒に、二人のギャラリーを作る夢、少しずつ進めていきたいです。」


ハルトは満足そうに頷いた。「ありがとう、レニ。これからは、二人でその夢に向かって一緒に歩んでいこう。」


---


それから、二人はギャラリーを開くための計画を少しずつ立て始めた。場所を探したり、必要なものをリストアップしたり、どんな形のギャラリーにするかを話し合ったりする日々が続いた。


レニにとって、この新しい挑戦は大きなプレッシャーでもあったが、ハルトと一緒に夢を共有することで、少しずつその不安も和らいでいった。彼女は、ハルトと共に何かを創り上げるという目標が、今まで感じたことのない充実感を与えてくれることに気づいていた。


「いつか、私たちのギャラリーにたくさんの人が来て、私の絵や言葉を見てくれる日が来るかもしれないんですね。」レニはそう話しながら、未来に思いを馳せていた。


「その日を目指して、これからも一緒に頑張ろう。」ハルトは彼女にそう言い、二人はこれからの挑戦に向けて再び力を合わせる決意をした。


---


夢に向かう道のりは、簡単なものではないかもしれない。だが、二人で支え合い、共に歩んでいくことで、どんな困難も乗り越えられるだろう。レニとハルトは、二人で築く未来に向けて、確かな一歩を踏み出した。


彼らの夢は、これからも膨らんでいく。そして、その夢が叶う日が来るまで、二人は手を取り合い、どんな道も一緒に歩んでいくのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る