ハルトレニ
星咲 紗和(ほしざき さわ)
プロローグ
夜の空が急に暗くなり、雨が激しく降り始めた。スコールのような勢いで、古びた寺の軒下に人々が急ぎ足で駆け込む。数人の中で、ひと際目立たない二人が、偶然同じ場所にたどり着いた。
車椅子に座る青年ハルト。彼の目は雨を見つめていたが、その表情にはどこか諦めのようなものが漂っている。彼は無意識に視線を横に移し、そこで彼女と出会う。
引っ込み思案でうつむきがちな女性、レニ。彼女は髪の毛で顔を隠すようにして、誰とも目を合わせないようにしていたが、ふとした瞬間、ハルトと目が合う。二人の間に流れる沈黙は、一瞬の出来事だったが、その夜、二人の運命は大きく動き出す。
何も特別な言葉は交わされない。ただ、雨が降り続ける音が、彼らの未来を予感させるかのように響いていた。それぞれが抱える孤独と障害を超えて、二人が歩むべき道が、今始まろうとしていた。
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