第17話 旅行3日目

旅行3日目。


3日目は、ツーショットタイム、告白だ。


ツーショットタイムは、

神崎くん、如月くん、桐生くん、岡部さん、黒崎仁の順だ。


宿泊施設の庭に備え付いているプールで、水着になって2人で好きなテーマで話し合うらしい。


なんでプールでなんだろう?


やっぱり、テレビ的にセクシーショットが必要なのかな?


など考えつつ、私は例のセクシー水着に着替える。


さて、私は先にプールに入って待っていると、神崎くんがやってきた。


「やあ、お待たせ。

 なんだか緊張するね。」


「ええ、そうね。」


「実は僕、ちょっと自信無くしちゃったんだよね。」


「え、どうして?」


「今回の旅、あんま存在感なかったなって自分でも思うんだ。

 あはははは。」


ちょっと気にしているみたい。


でも、昨日は猫を助けてたし、テレビ的にもいい感じなんじゃないかな?


「そんなことないよ、猫助けてたじゃん!」


「いやあ、まあね。

 でも、岡部さんのクラゲの件にはかなわないなあ。

 黒崎くんはスミレさんと抜け出しちゃうし。

 みんなほんとすごいよね。」


「たしかにね。

 でも、神崎くんもがんばってたよ!

 猫ちゃん助けたの見て、神崎くんの株も急上昇!」


私は彼をフォローする。


「へへ、なら良かった。

 でも、もっとスミレと会話できればよかったなあ。」


たしかに、この旅行はみんなでいる時間は長いけど、1対1になる時間はあまりない。


だから、私へのアプローチもなかなか難しいものがあるんだろうなあ。


私は、男性たちって大変!と心の中で思った。


そんなこんなでお次は如月くん。


「2人きりは久々だね、スミレ。」


「ええ、そうね。」


「この2日間どうだったかな。

 僕、いいとこ見せれたかな?」


「ええ、料理と演奏!

 やっぱりすごいわね、如月くんは何でもこなせちゃう。」


「小さいころから培ったノウハウを使っているだけだよ。

 英才教育ってやつだね。」


「でも、なかなか誰にでもできることじゃないわ。」


「スミレにアピールできててよかった。

 でも、まだまだ僕のいいところ、出し切れてないな。

 これからもアピールしていくから、見ていてよね、スミレ!」


さすがに面と向かってアピール宣言されると照れるな。


イケメンへの耐性、付いてきたと思ったんだけどな。


やっぱりイケメン強し、なかなか慣れない・・・。


すると、如月くんが思い出したように言う。


「そうだ、これ、スミレに買ったんだ。

 かわいいし、スミレに似合うと思って!」


如月くんはかわいい木彫りのサルのキーホルダーをくれた


「わー、ありがとう!」


「前プレゼントしたバッグに付けるのはどうかなって。」


如月くんは気が利くイケメンだ。


お次は桐生くん。


「よお、スミレちゃん。

 どうよ、俺のコミュ力!

 見直した?」


以前の2人と違って、自信満々。


たしかに、彼のコミュ力はすさまじかった。


このくせ者男子たちをうまくまとめ上げ、リードしていたように思う。


「すごかった、リーダーって感じ!」


「だろっ!

 こんな遺伝子、スミレちゃんの子どもにも必要だと思うぜ、俺は。」


なんてどストレートに言うの!


「あははは、検討しとくよー。」


私はなんとか適当に受け流した。


「でも、2人きりで何かできなかったのは悔やまれるな。

 まあ、テレビのスケジュール的に厳しいところもあったけど。」


たしかに、桐生くんとも2人きりになるタイミングはなかった。


「2人きりの会話はセレクションルームでまたしようや。」


「ええ、ぜひ!」


お次は岡部さん。


「やあ、スミレさん。

 その後、体調は問題ない?」


クラゲに刺された件のことかな?


「ええ、岡部さんの処置のおかげですっかり元気です!

 刺されたところ、ちょっと傷跡が残ってるけど・・・。」


「え!見せて見せて!」


傷跡はお股のすごく際どい所だ。


「やだ!えっち!」


「いやあ、そんなつもりはないんだけどなあ。

 あっはっはっは。」


岡部さんは優しいし、ちょっと堅物そうだけど、意外とジョークも通じる人だ。


「僕は医師免許も持ってるから、いざというとき、スミレさんを守ることができる男だよ。

 だから、いざというときは頼りにしてほしい。」


なんて頼もしい人なんだろう。


次の告白タイム、やっぱり、黒崎仁と岡部さんの一騎打ちかなあ。


最後に黒崎仁。


「やあ、スミレさん。

 ショッピングの時は一緒に迷子になっちゃったね。

 申し訳ない!」


えーーーーーーーっと・・・だれ?どちら様?


いつもの黒崎仁じゃない。


なにこのただのイケメン好青年は!


私は開いた口が塞がらない。


すると、黒崎仁がグッと顔を近づける。


えっ! またキス!?


と思ったら、耳打ちしてきた。


「これはテレビ用の演技だ。

 適当に付き合ってくれ。」


なるほどねえ。


テレビ向けの黒崎仁は好青年で売っているんだ。


だから本性を隠しているんだ。


「スミレさんとはあまり話せなかったな、悔やまれるよ。」


「ええ、そうね。」


「でも、旅行中にいろいろアピールできたかなって思ってる!

 告白タイム、信じて待っているよ!」


よくもまあ、ペラペラとしゃべりますわ。


さすが俳優、演技がお上手ね。


そうして、全員のツーショットタイムを終えた。


あー疲れた、なんだか、新卒を一気に面接する面接官の気持ちがわかった気がする。


私はお手洗いに向かった。


すると、男性陣が何やらしゃべっている。


良くないことだとわかりつつ、私は聞き耳を立てた。


「いやあ、みんなお疲れさん。

 しかしよお、実際んとこ、みんなスミレちゃんのことどう思ってる?

 俺は当然、本気で狙ってるぜ。」


桐生くんだ。


いつもの調子でしゃべっている。


「俺も本気だよ、当然!」


神崎くん。


「僕も!」


如月くん。


「ああ、右に同じ。」


岡部さん。


黒崎仁はなんと言うのだろう。


「俺はなんとも言えないな。」


え?どういうこと!?


私のこと好きで、狙ってるんじゃないの?


黒崎仁が続ける。


「俺にはツバサっていう冷凍保存中の思い人がいてね。

 正直、スミレはその当て馬、代わりでしかないんだよね。」


え、うそ・・・そうなの?


目の前の女しか見ないって言ってくれてたのに・・・ひどい・・・。


やっぱり、ツバサさんのことが忘れられないんだ・・・。


「お、おまえ、なんてこと言うんだよ!

 それじゃ、スミレちゃんがあんまりだぜ!」


「まあ、俺は今回のプロジェクト、役の幅を広げるために来ただけなんだ。

 だから、あんまり勝つ気はないよ。」


「そうかい、じゃあ、俺たち4人でスミレちゃんは取り合いさせてもらうぜ。」


すると、


ガタンッ!!


私はそばにあった椅子に足をぶつけてしまう。


男子たちが私の存在に気付いてしまった!


「あっ、今の話、聞いてないから!」


私はその場から逃げるように立ち去った・・・。


黒崎仁、本気なの?


本気で、私のことなんかどうでもいいっていうの?


もう知らない、あんなやつ!


---


そうして始まった告白タイム。


私が選んだ人それは・・・。















岡部 雅臣。


岡部さんなら私を守り愛してくれる。


黒崎仁なんか知らない。


あんなサイテー男。


こうして、3日間の旅行は幕を閉じた・・・。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る