女が絶滅した異世界で私は逆ハーレムを築く
ムゲン
第1話 異世界転生
私は音ノ葉スミレ、享年25。
ホストの刹那(せつな)にドハマりしていた。
彼はホストで女たちをはべらせる一方で、私は独り身。
「こんな世界、おかしい。」
私は独り、部屋でつぶやく。
なんだかすべてがばかばかしくなって、刹那を独り占めしたくって。
私はその夜、刹那を呼び出し、刺し殺した。
そして、後を追うように私も自分を刺して死んだのだ・・・。
---
「やあ、すみれ君。」
「へ?」
「こっちこっち、すみれ君。」
私は後ろを振り返る。
「え?だれ?なんなの?どこなの!?」
真っ白の空間。
霧がかった、白いモヤのような物体から声がする。
モヤからは両腕が出ており、身振り手振り、ジェスチャーを交えてしゃべっている。
「僕は神、君を救いに来た。」
「神?え?」
混乱する私を差し置いて神は続ける。
「一定以上の不幸の感情を持って死んだ人間は、次に転生する異世界を選べるようになっているんだよ。
死ぬ直前、すごく不幸な気持ちだったでしょう?」
ひょうきんな神の口調に、私は次第に落ち着きを取り戻す。
「ええ、そうね。
たしかに最悪な気持ちだったわ。」
「そう、君は神である僕に選ばれたんだよ。」
神は続ける。
「で、どんな世界がいいかな?」
神は私に転生先の希望を尋ねる。
「私は、愛がほしかった。
ただ純粋な愛。
私がやつ、刹那に向けていたような愛。
私も・・・そう。
刹那のようなハーレムを築きたかった!」
「ほうほう、なるほどなるほど。
ふむふむ。それじゃあ・・・。」
神は手帳のようなものをモヤから取り出し、ぺらぺらとめくる。
「ん!ここがいい!」
神はなにか見つけた様子。
神は右腕を突き出し、私を指さす。
「すみれよ。
君はスミレとして、女性が絶滅危惧種となった異世界へ転生しなさい!!!
そして、逆ハーレムを築くのです!!!」
神がそう言うと、視界がねじ曲がり、頭がぐるぐるとし、目の前が真っ暗になった。
---
私は目を覚ました。
どれくらいたっただろう、そもそも時間という概念はないのかもしれない。
なんだろう、私の目の前には透明なプラスチック。
私はベッドのようなものに横たわっている。
あ、これ、保育器だ。
なんで?
私は自分の手を見る。
いや、保育器にいるけど、赤ちゃんの手のサイズじゃない。
胸に手を当てる。
え、めっちゃデカい。
前世の私なら間違いなく嫉妬してる大きさだ。
どうやら異世界に転生したらしい。
そうこうしていると、大慌てで男の人がこっちへ来る。
「なんてこった、生き返っている!!!」
男がしゃべる。
異世界なのに、言葉はわかる。
「あ、あのう・・・。」
私は男に声をかける。
「ちょっと待って、今開ける!」
男が大慌てで機械を操作すると、カプセルが開いた。
「これは奇跡だよ!」
「え、どうなっているの?」
私は男に質問する。
「え? 覚えてない?
君は女性枯死(じょせいこし)病の生還者なんだ!!!
名前はわかる?」
「え、じょせいこ・・・し・・・?
名前はスミレ。」
「ああそうだ。
じゃあ、僕の名前はわかる?」
「・・・。
わからない・・・。」
この男、初対面だからわかるはずもない。
「まいったな、こりゃ。
記憶喪失だ・・・。
まあ、生きているだけマシか・・・。」
男は額に手をあて、天を仰いだ。
私は異世界転生したのだが、この男は私が記憶喪失だと勘違いしている。
この状況、こっちだって天を仰ぎたいよ。
「君はね、女性枯死病でたしかに一度死んだ。
でもね、なぜだか生き返ったんだよ!」
「なに、そのぶっそうな名前の病気は?」
枯死病って・・・全女性の仇みたいな名前・・・。
「これは、女性だけがかかる謎の病気でね。
これに感染すると、突然倒れて、意識が戻らないまま急激に体の水分が抜けて、老人のようになって死んでしまう病なんだ。」
聞いたことない病気だし・・・。
色々不安すぎる。
とりあえず、この異世界はどんな状況なのか聞く。
「そ、そんな病気、聞いたことない・・・。
せ、世界はどうなっているの!?」
男は顎に手を当てる。
「どう説明しようかな・・・。
簡単に言えば、この病で女性はほぼ絶滅している。」
男は続ける。
「この病で倒れた一部の人は、体から水分が逃げないように冷凍して保管している状態なんだ。仮死状態だね。」
「私のほかに、動ける状態の人は??」
「それはね・・・君だけなんだよ・・・。」
え、私だけ!?
ちょっとこの世界やばくない?
人類滅亡するじゃん・・・。
男は続ける。
「いいかい、君は人類の希望なんだ。
君はこれから、多くの子を産まなければならない。
わかるね?」
はいーーーー!?
<<作者あとがき>>
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