第8神話   ヒーロー(?)参上!①

 そこに居たのは黒のシルク製の上着の下に白のTシャツを着ていて、赤色の革のズボンを履いており、黒髪で緑色の瞳を持つ俺とおないどしぐらいの人間が居た。

 一体こいつは何なんだ?


「ウゥゥゥゥゥゥ!!!ラルバァ!」


「…落ち着けって。そうカッカすんなよ?」


 人間はダメ元で何とかなだめるような言葉をマガミにかけるが勿論響いてはいなかった。


「んーで……」

 

 その青年は気怠そうに俺の方を向いた。

 特徴的な緑色の瞳が遠くからでも綺麗に見える。もしやあの神が言っていた人間っていうのは……


「おいおい人間。」


 すると次には俺が明らかに喋る余裕も無いことを分かっているのにこの俺に話を振ってくる。


「助けてもらっといて感謝の言葉も無いのか?いくら敵どうしとはいえ、何か言うことがあるんじゃないか?」


(……は?)


 

 お前の目は節穴か?という言葉がここまで適切な場面に出くわすとはこれ以上ないだろう。

 流石に両脚が切断された中で感謝の言葉を強要するのはマガミ以上に鬼畜である。

 

 (無理に決まってるだろうがよ…!)


「あ?何でだ?」


 そしてさりげなく心を読む。


(見…たら……分かるだろ!)


「なんだよ、脚が無くなっただけだろ。すぐに死ぬわけじゃ無い。」


 そう言いながら俺に近寄り裂け目を使って包帯を取り寄せた。

 今の言葉で確信した。間違いないあのキメラ側の人間だ。

 ここまで発言がサイコパスで鼻につくのはあいつの影響でしかない。

 

(クソが……こいつ…!)


「そんな悪態つくなら助けん。じゃあな。」


 そう言って空間の裂け目を発動させて一瞬でどこかに消えた。これには俺もマガミも呆然としてしまった。


(え?冗談……だよな?)


 そう思い、もう一度裂け目が開くのを待った。数秒経ってもパリパリという音すら聞こえなかった。


(待て待て待て、嘘だろあいつ!?何のために来たんだよ!?)


ーーいやぁそんな態度だったら、なあ。助けたくてもこっちが気分悪くなるだけだしなぁ。


 そう言いながら俺の脳内に語りかけてきた。明らかに舐めきっている。


(こ、この…!?く…)

 

 俺はまた心の中で悪口を言いそうになったが、わずかに理性が抑えてくれた。 

 改めて今やるべき最善策を実行する


(…じ、じゃあ……ご教授………願います。)


 俺は態度を改めているように見せるため、神の言っていた本人であろう人間に向けて敬語で語り掛けた。

 激痛の中でも感謝の言葉を述べる俺の気持ちにもなって欲しいものだ。


 ーーもっと心から込めて!生きている内に真心ってのを習わなかったのか?そうじゃないと伝わるものも伝わらないぞ!?


 あぁやばい。足が無くなってでも、目が無くなってでも、植物人間になったとしてもこいつを殺そうと心の底から思った。


ーーあーあーあー、そんなこと言うのか?本当に助けないぞ?


「……………」


 その合間にもマガミは無言で俺に目を向けて手を前に能力を発動させる構えをしている。次も恐らく体の一部を切断するのだろう。


(やばいやばいやばい、また来る!クソぉ……こんな事は言いたくないが……)


「助けてください…対価………も支払います!!お願い…し…ます!」


 俺は力を振り絞ってあの人に向けて叫んだ。

 完全にこの状況を利用して、俺を弄びながらも自分に都合の良い状況を作り出せるようにしている。完璧にあいつの策略にハマってしまった。


「わるあがきするな。」


(来る…!)


「クラエ…!」


 もう一度あいつが来ることを信じて、俺はマガミの攻撃を受けるのを覚悟した。

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