第3神話   それぞれの策略②

 まずは、俺のこの作戦で行ってみるが上手く行くだろうか......。

 こうして大口を叩いているのは良いのだが、実際は俺達も相手と同じで今は動けない。

 神が先刻言っていた通り、人間の周りに空間を開けて此方に空間を転移さえすればすぐにでも取り込めるのだが......。いくら本気を出せないと言っても神が厄介すぎる。数秒の予知もあるし、何よりも最上位の神だ。流石にそんな隙を見せるほどヤワでは無い。

 クソッ.......!もう少しで願いが叶うところまで来たというのに!

 は本当に上手くいくのか?何も成し遂げる事が出来ずに終わるのか?そんな醜態をあいつらに見せたく無い。

 もし見られてしまったらあいつらみたいな何もしない奴らに軽蔑されるのか?自分では何もせず、他人が夢を語る時はお前なんかには無理だどうだと言って、俺たちを無下にするようなあの無能な神たちと同じように?

 絶対にそれだけは.....!それだけは.....!


(……落ち着けラルバ。此処まで来たんだろ?)


ーーで、でも


 ウラさんになんとかフォローしてもらっているが、それでも焦るばかり。


ーーほ、本当に…上手くいくか……

 

 今すぐにでも神の力を手に入れたい気持ちが先走りしてしまい、前が見えなくなりかけていたその時


 ーーおいラルバ!焦んなや。しっかり顔上げろ!


 ふと自分の心の奥底から声が聞こえてきた。


「……最新型の種類の人間か……噂に聞いていたが、まさか神降ろしが出来る程にまで創造されているとはな…」



 じげんの神が何やらボソッと口を開いた。肩に担がれている人間もじげんの神の声が少し聞こえたのか、神に疑問符を浮かべて顔を向けている。

 俺はとにかくの声に耳を傾けた。

 

 ーー夢だった力をすぐに手に入れたいのは分かるが一回冷静になれって大丈夫だ。


 ーーそんな姿あいつら見られたらもっと醜態晒すことになるぞ?それでもええんか?


 ーーそうそう、こういう時はいつでもあいつらの顔思い出してたでしょ?よく思い返してよ?


 俺はの声を聞いてすぐに我に返った。そして言われるがまま、周囲の奴等、の顔を思い出した。

 


 ーーそんな子どもじみた夢まだ願ってんの?叶わねえって。叶えようとしてもすぐに意志が弱くなっておしまいだよ。そういうのは。


ーーいい加減現実を見ろよ。そんな馬鹿げた発想力は、もっと有意義なことに使えよ?


ーーお前.....そんな夢持ってどうするんだ......これから先の将来がどうなっても良いのか!?そんな夢じゃこの世を生きていくことすら難しいぞ!?後悔しても知らないからな!!


 よし、俺は絶対に成し遂げられる。

 あいつらみたいな大きな夢を見ようともせず、すぐに諦めるような蝋燭へたれがいたからこそ俺の憧れの火は消えなかった。

 俺が今こうしてここに立っているのをあいつらが見たらどう思うんだろうか。楽しみで仕方がない。俺は改めてあいつらに感謝の念で満たされた。


(………)

 

 そして緊迫していた顔からほんの少しだけ笑みが漏れたことが自覚することが出来た。

 

ーー本当に.....ごめん。こんな我儘に付き合ってもらって......お前達の命をまた危険に晒してしまうし……


ーー全然気にして無いぞ?寧ろそんな夢じゃないと私の生き甲斐にならないと思ってるからな。


ーー漸く俺達で高みを目指せるチャンスが来たんや。こんなの協力せんほうがおかしいやろがい。


ーーお前みたいな馬鹿げた夢を謳ってる馬鹿程、不思議と着いていきたくなっちゃうんだもん。もう流されたからには最後まで着いて行かなきゃいけないし?


 あぁ、本当にこいつらに出会えた運命には感謝だ。ありがとうウラさん、そしてーー


「………へぇ、出て来たかお前。色々聞きたい事あるけどまずは、だ。人間。」


 心の中で感謝を伝えようとした時に神が口を開きながら、ウラさん、いや正確には心の中の俺の方だった。


「お前……神が嫌いなのか?」


ーーあぁ嫌いさ。大嫌いだ。


 俺は心の中から空間の裂け目を使って相手の脳に声を送りつける。


「…じゃあなんでくうかんの神に付いて神降ろしまでしている?」


ーーそんなの人間の俺が神を殺すにはこれしか無いじゃないか。それにこの神様とは昔から付き合いも長いし、神を減らしたいとずっと思ってたから、意見が合致して協力してる。


「…………成る程。」


ーー逆にこれが本来あるべき理想像なんだよ。君たち神様なんてただ能力を持っているだけで自分よりも下の存在の俺たちに勝手に奉納だったり信仰してもらって長い間崇められてさぞかし気分が良かっただろ?それでつけ上がって自分達が何でも出来るだの偉いだのと思って調子に乗って何もかも自分の思い通りに動かそうとするような奴等ばかりになった。だからそろそろ君たちが俺たちの思い通りになるようにに尽くすべきだ。


「…………」


ーー何が気にくわないのかな?尽くしてもらったんなら返すのが道義だろ?


「…尽くしてもらってやったという傲慢な態度を取るやつに対してか?」


 神もこれに反応して静かに怒りを露わにしていく。あらら、そんなに刺さっちゃったか?


「お、おいどうしたんだよ!?神、落ち着け!一回冷静になれよ!」


 人間も神の小さな怒りに気づき、何とか神の気持ちを落ち着かせようとするが、神はその声に耳を傾けるつもりはなかった。どうやら自分の視野が狭いことに気づいていないらしい。肉食動物以下の視野の狭さだな。

 威圧のオーラが先程よりも格段に上がっている。どうやら神達を馬鹿にされたことが奴の癪に障ったようだ。これは良い牽制材料になる。


ーーまぁまぁ、落ち着けよ。何も一人の人間に慈悲も与えることが出来ないようなやつらはハナから信用していない。ただ単に俺の目標を叶えるための踏み台になってくれた感謝の念を述べただけだ。何もそんなにピキることでは無いだろう?


「…ま、そうだな。神としての道義にかけて、お前みたいな信心深くないやつにも天啓を授けてやらないとな。」


 そう涼しい顔で切り替えして言っているが、間違いなく心の奥底で怒りを抱いている。

 威圧感がまた上がっているのが何よりの証拠だ。



 さて、そろそろか……。


「ーー?何がーーえ?」


 神が予知して気づいたようだ。まぁ遅いんだが。

 そうして俺達は、神の上に1つの空間を開けた。


 

 そしてその空間から俺達はあるものを取り寄せた。


 

 

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