第66話 ジェニーを捜せ

 情報収集の途中で消息を絶ったジェニー。

 ……どうにも嫌な予感がする。


 マットの件で調査をしている矢先であったため、もしかしたらこちらの動きを勘づかれて先に動いてきた可能性もある。


 だが、そうなると信じたかったマットが俺たちを陥れようとしているって説が濃厚になってきてしまう。


 けど、まだ断言するには早い。

 とにかく今はジェニーの安否確認を最優先しなければ。

 疑うのはそれからでも遅くはない。


「よし。ジェニーを捜しにいこう」

「ならばここは我ら三人にお任せを」


 そう言いだしたのはローチだった。


「俺もついていくよ」

「いえ、ソリス様は先に宿でお待ちください。ミリア様たちもいますし」


 そうだった。

 ついついジェニーが心配で同行を希望したけど、さすがにミリアやメーテも一緒というわけにはいかない。となれば、彼女たちを守る存在も必要だろう。


 それに……ローチはもうマットが裏で仕掛けていると判断しているようだ。

 外にいたらどこから狙われるか分からないから、先に宿へ戻るように告げたのが証。


 ……まあ、その宿屋も安全だとは断言できない。


 老舗商会を運営するマットにとって、このカザタムはホーム。この町を熟知しているからこそ、どこに刺客が潜んでいるか分からないのだ。


 しかし、そう考えると周りすべてが怪しく見えてくるな。



 その後、三人の護衛に守られながら宿屋に到着。

 町でもトップクラスの高級宿屋らしく、客のプライバシー管理もきちんとしていると評判になっている。


 貴族でないとはいえ、一応うちは良家に入るからな。

事前に調べてこの手の対策がちゃんとしている場所を選んだのだ。


仮に、危険な目に遭っているわけじゃなく、何らかの事情によって合流が遅れただけだとしたら、きっと彼女はこの宿へやってくるはず。


俺たちは大人しくそれを願って待つとしよう。


「それでは我らはジェニーの捜索に当たります」

「頼むよ、みんな」

「お任せを。――いくぞ、ベック、デビット」

「「はっ!」」

 

 頼もしい騎士たちを送り出してから部屋に戻ると、ミリアがメーテを寝かしつけているところだった。


「おかえりなさい。みなさんもう出発しまして?」

「あぁ。気合十分だったよ」

「ジェニーさん……何事もなければいいのですが」

「まったくだ」


 せめてここからでも捜せないかと、俺は部屋の窓へと近づいて外の景色を眺める。

 すると――


「あれ?」


 何か違和感を覚えた。

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