第48話 突然の来訪者
豊穣の女神であるメーテの力――とは断言しきれないところもあるが、ともかく聖牛たちがリーノ村へ移住してくれることが決定した。
「信じられない話じゃなぁ……」
一連の展開を間近で見ていたフーバさんは呆れたように言う。この場合、まさかこんなにあっさり決まるなんてという反応なんだろうな。
それは俺も同じだった。
正直、実際にこの目で聖牛の存在を確かめるまでは半信半疑だった部分がある。
しかし、ボス聖牛を目の当たりにした瞬間、「これはヤバい」って感情が胸の奥から沸々と湧きあがってきた。
ボス聖牛も最初は俺たちをかなり警戒していたし、村へ一緒に来てくれるよう説得するのは困難かと思えた。
――が、それを実現させたのは間違いなくメーテだ。
村へと戻り、メーテの大活躍を知った村人たちは驚くと同時に豊穣の女神の力が本物であると確信したようでお祭り騒ぎ。
屋敷のメイドたちはひたすら俺に謝っていたが、俺自身、まさか地中を進んで移動するなんて思いもしなかったのでお咎めはなし。
まあ、あの力を直に見ると、今後はメーテを一緒に連れていった方がよさそうではある。
持っている魔力は凄まじいので、逆にひとり残していく方が心配になってくるな。
とりあえず、今日の夜は聖牛の歓迎宴会をするって話になり、村人たちは張り切って準備を始めていた。
そこへナチュラルに混ざっていくジェニーやローチたち。
屋敷の使用人たちも何人か合流してまたしてもお祭り騒ぎ状態となった。
「本当にここは賑やかですわね」
「みんな! 楽しい!」
「そうですわね。とっても楽しそうですわ」
メーテを抱っこしながら宴会の準備を見守るミリア。
その様子は本当の親子のようでほっこりするよ。
しばらく眺めていると、いつの間にか合流していたスミゲルが俺のもとへとやってきた。
「ソリス様、少しよろしいでしょうか」
「どうかしたのか?」
真剣な声色だったため、俺は何かあったんだと即座に悟る。
――しかし、スミゲルの語った内容は意外と軽いものであった。
「来客です」
「えっ? 俺に?」
お客さんが来たというのであれば、それほど強張ることもない――が、スミゲルの緊張した表情を見る限り、その客自体に何か問題がありそうだ。
しかし、誰だろう。
聖牛の獲得に成功したので、仮に父上であったとしてもスミゲルの表情があそこまで険しくなる必要はない。
「一体誰なんだ?」
「……トレドル・グリンハーツ様です」
「っ!?」
その名前には聞き覚えがあった。
――ミリアのお兄さんだ。
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