さよならを教えて。(もうひとつの物語)

猫野 尻尾

第1話:跨線橋に現れた熟女さん。

この物語の主人公「西山 裕太にしやま ゆうた」23歳・某外資系企業に勤めるサラリーマン。


裕太には同じ部署に想いを寄せる年上の女性がひとりいた。

持て余した想いを思い切って告白したところすんなりオッケーをもらえた。

その後、彼女と付き合うことになって幸せの絶頂にいた裕太。

毎日会社に行くことが嬉しくて彼女と順風満帆に恋を育んでると思っていた。


だけどある日、同僚から耳を疑うようなことを聞かされた。

なんでも裕太の彼女が他の部署の男子と浮気してるって・・・。

ふたり仲良く腕なんか組んで街を歩いてるところを何度か見たって・・・。


そんなこと裕太は信じられなかった。

彼女はそんな人「女」じゃない。

でも火のないところに煙はたたないって言うし・・・。

そこで、その事実を彼女に確かめてみた・・・問い詰めると「うるさい」って

怒られた上に開き直った彼女にこう言われた。


「あんたは真面目すぎるから面白くないの、だからもうあんたには飽きちゃった

から・・・」


って・・・。


彼女は裕太より浮気した相手「男」を選んだ。

彼女のことが大好きで大好きで信じていたのに、その事実は裕太にはショック

すぎた。

結局、裕太の恋は彼女に捨てられた形で終わった。


もともとナイーブな裕太はそのことで心に深い傷を負った。

そして次の日から会社を休んだ。

明日はクリスマス・イブだって言うのに、彼女とイブを楽しむことももうない。

マンションの部屋で一日中うずくまったまま・・・電気もつけずただ悶々と

時間だけが過ぎていった。

そんな時、人が考えることはネガティブなことばかり。


裕太は余計なことを考え始めた。

彼女のいない明日なんて無理に生きてたって僕に楽しい未来なんてないんだ。

何もかももう嫌だ。


こんなに辛いのならと裕太はいっそ死のうと思った。

魔が差したと言うべきだろうか。


これから死のうって思う人間の正常じゃない心理は普通じゃない・・・。

正常な人には理解できないことだった。


真夜中過ぎ、裕太は夢遊病者のように街を徘徊した。

そして最寄りの駅の跨線橋こせんきょうまで来た時、通過する電車に飛び

込もうと欄干から身を乗り出そうとした。


そしたら裕太のシャツの裾をビロ〜ンって引っ張る誰かがいた。

引っ張られるから裕太は欄干から降りるしかなかった。

シャツを引っ張るのは誰?と思って振り向くと、そこににっこり笑う綺麗な、

女性?・・・熟女さん?・・・が立っていた。


つづく。


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