第37話「ぼんげ先生の魔法学講座Ⅱ」
ある日の昼下がり。「コルボ」店内のテーブル席にて。
「そういえば、フォンデュ氏? 件の召喚魔術の進捗はいかがなんですか?」
「さっぱりでござった……。我らの野望の成就はまだまだ先になりそうですぞ……」
フォンデュとリサが何やら神妙な面持ちで話しをしている。
「やはりそうですか……。召喚魔術はハードルが高いですね……」
「しかし、拙者は絶対に諦めないでござる!」
ピークも過ぎ店内も落ち着いた状態のため、話の内容は割とはっきりと耳に入ってくる。
「何? アンタたち召喚魔術なんてやってるの?」
なんとなく話の内容が気になったカリンは、二人の話に加わってみることにした。
「あ、カリン氏。実はそうなんでござる」
特に隠す気もないようだ。フォンデュは実にあっさりとカリンに打ち明ける。
「あれって常人の魔力ではどだい無理な代物でしょ……? アンタたちにそんな魔力があるとも思えないんだけど?」
「まあ正攻法では無理ですな。しかし、いくらか裏口のような方法ならありまして。我々はその方法での召喚を目指しているところなのでござる」
「へえ? それってどんななのよ?」
召喚魔術は近年、その莫大過ぎる魔力消費量からもはや幻の存在となっているはずだ。カリンはその方法とやらが少し気になり、フォンデュへと尋ねてみる。なにやら眉唾な話ではありそうだが……。
「『É Fran 魔法大学』のぼんげ教授が、この前動画サイトにアップしてたでござる。暇なら一度見てみるでござるか?」
「聞いたこともない大学名ね……。まあ今暇だし見てみようかしら?」
今なら客足もまばらだし大丈夫だろうということで、カリンはその動画を見てみることにした。
***
一口に「召喚魔術」と言っても様々なケースがあり、その条件次第によって魔力消費も変わってくる。
まず一つ目が当然「何を召喚するか」だ。ここで神話級の魔獣を召喚しようとすれば、当然魔力がいくら有っても足りない。逆にゴキブリを一匹召喚するくらいであれば、前者に比べ遥かに現実的な魔力消費でも可能だろう。
また、触媒の有無や、術者の対象に対するイメージの鮮明さなどでも魔力の消費は変わってくる。「よく読み込んだ本の中のキャラクターを、その本を触媒にして召喚する」なんて方法であれば、多少魔力の消費を抑えられるかもしれないな。
次に、対象を「どこに召喚するか」だ。顕現する場所を指定するのであれば、そのための出口も当然用意してやらなければならない。
逆に場所の指定をしなければ、どこか地脈の強いところあたりに勝手に顕現するので、こちらが出口を作らなくていい分の魔力は浮く。まあそれだと地球外に顕現とかもざらにあるので、術としての実用性には欠けるだろうが……。
最後に「術者と対象との主従関係」だな。当たり前だが、召喚対象を下僕として従えたいのであれば、それ相応の魔力が必要になる。
RPGの黒幕がラスボスの大魔王を召喚するときのように、自らを下僕側に設定すれば比較的安価に強大な存在を呼び出せる場合もあるが……。まあこれは今のご時世でやる奴はいないだろう。
そして、どうしても望む条件での召喚をするための魔力が足りない場合に取る最後の手段が、代償を捧げることだ。これは例えば、術者の命と引き換えであったり、もしくは対象の顕現に時間制限をつけたり、能力の制限を課したりといった類のものだな。
まあ、今日びそこまでして召喚魔術を使いたいやつもいないだろうし、今日の話は頭の片隅にでも入れておけばいいだろう。
おっと、話が長くなってしまったな……。今日の動画はここで締めるとしよう。
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では、次の動画でまた会おう
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