第28話「『コルボ』での平和な日常」
9:00。
カリン・アオイ・ノアの出勤時刻。
大体カリン→アオイ→ノアの順に店に着くのだが、この日はアオイの姿が無かった。十中八九変なことにでも巻き込まれているのだろう。二人も「またか……」といった認識のようで、気にする訳でもなくそれぞれの業務に入る。
キッチン業務は専ら店長の担当なのだが、仕込みの類は「面倒くさいから」とカリンに一任しており、本人は重役出勤である。
***
11:00。
開店時刻。
この時間はまだ客足もまばらだ。
大体最初の客が来るのが先かどうかというタイミングで店長は現れる。今日は三組目の客と一緒に出勤してきた。
アオイがいないことをカリンから伝えられるが、こちらも「またか……」と気にも止めていない様子。
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12:00。
飲食店のフィーバータイム突入。
いつもはやる気のない店長だが、この時ばかりは鬼神のようなキッチン捌きを見せる。
ホールも今日はアオイがいない分てんやわんやだ。
こうしている間にも「唐揚げプレート50個入り レモン付き」と「ニンニクラーメン ニンニクアブラマキシマムヤサイアコンカグア」の注文が入ったようだ。
***
14:00。
フィーバー終了。
すると、絶賛行方不明中だったアオイがようやく姿を現し、休憩がてらの事情聴取タイムが始まる。
「何から話せばいいのかな……」と苦笑いのアオイであったが、なんでも包丁を持った不審者に追いかけ回されたのだとか。
町の治安に不安を覚える一同であった。
***
15:00。
少しずつ入りをずらしながら順番に休憩に入る。
カリンとアオイは他愛のない歓談、ノアは読書、店長は爆睡が休憩中の主な過ごし方のようだ。
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17:00。
全員の休憩が終わり、ディナータイムに突入。なのだが……。
店長が戻ってくる気配がない。大方いまだに寝ているのだろう。怒ったカリンが叩き起こしに向かった。
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18:00。
ディナーピーク時。
とはいえ、昼ほど殺気立ったものではなく、穏やかな時間が流れている。
特定のスタッフと話をしたり、そのパフォーマンスを観たりすることが目的のお客の場合は、この時間での来店が多い。
今日も今日とて、カリンが男性客にウザ絡みをされる毎度お馴染みの光景が繰り広げられていた。
***
19:00。
「コルボ」の閉店時間は21時だが、店長の気分次第で早まることもある。
この日は「もう疲れた」と、早々に片付けを始めてしまっていた。20時には閉まるコースだろう。
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20:00
片付けも終わり、この日はフライングで閉店となった。
そんな事情など知る由もない客が来店することもしばしばだが、その場合はどんなメニューが頼まれても「あ~、今日はもう終わっちゃいましたね~」で押し通す作戦が実行される。
常連達の間では「20時以降の『コルボ』では何も出ない」というのは暗黙の了解と化しているようだ。
余談だが、前述の作戦でどうしても納得してくれない場合には、いくつか予備の作戦もあるらしい。
「アオイちゃんがお冷でパフォーマンスしてお茶を濁してた」「店長が実力行使で無理矢理追い出してた」「ヤクザに脅されてた」など、様々な目撃情報が上がっている。
***
20:30。
着替えも済んだら各々帰路につく。
四人とも家は徒歩圏内のため、そのまま何処かへ遊びに行くことも多い。
この日は近くのファミレスで食事を済ませてから帰るようだ。
「飲食店ならまかない飯とかはないのか?」といった疑問もあるかもしれないが、残念ながら「コルボ」にまかない飯の概念はない。理由はもちろん、店長が「面倒くさいから」と作ることを断固拒否しているからだ。
***
こうして「コルボ」での一日は幕を閉じる。果たして明日はどんな客がやって来るのか? 明日こそは平和に過ごせるよう願い、それぞれ眠りに就くのであった。
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