拝啓、勇者よ。俺が今から葬りにいく。

ハゲタコ長男坊

第1話 今から葬りにいく。

 面と向かって話すのが苦手だった。

 だからこの仕事が好きだった。

 

 小さな村の墓堀人を何年もやってると、知人や顔見知りの遺体を見る場合が多い。

 その時、俺は初めて面と向かって話せるようになる。生前だったら言えなかった本音を伝えることができる。

 そんなちっぽけな事が墓堀人を続ける理由だった。

 


「アリシアが死んだ」


 そう言って村長は新聞を机に置くと、黙って天井を見つめた。

 どうか村長の見間違えであってくれと心から願った。しかし、勇者死亡の見出しが現実を叩きつける。


―――アリシア・フールレイ。

 聖剣に選ばれし勇者にして、魔王討伐の英雄。

 村長の娘にして、俺の唯一無二の幼馴染。


 重たい空気を打ち壊すように、俺は仕事用のシャベルを手に取る。新聞によるとアリシアの遺体は魔王城に取り残されたままらしい。


「どこへ行くんだ」

「アリシアを埋葬しに行きます」

「危険だ! 殺されておしまいだぞ!」


 村長の忠告を無視し、北に向かって走った。

 今なら伝えられる。好きだということを。

 返事は来ないけど、それでも良かった。


 

 




 






 





 

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拝啓、勇者よ。俺が今から葬りにいく。 ハゲタコ長男坊 @def123456

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