拝啓、勇者よ。俺が今から葬りにいく。
ハゲタコ長男坊
第1話 今から葬りにいく。
面と向かって話すのが苦手だった。
だからこの仕事が好きだった。
小さな村の墓堀人を何年もやってると、知人や顔見知りの遺体を見る場合が多い。
その時、俺は初めて面と向かって話せるようになる。生前だったら言えなかった本音を伝えることができる。
そんなちっぽけな事が墓堀人を続ける理由だった。
*
「アリシアが死んだ」
そう言って村長は新聞を机に置くと、黙って天井を見つめた。
どうか村長の見間違えであってくれと心から願った。しかし、勇者死亡の見出しが現実を叩きつける。
―――アリシア・フールレイ。
聖剣に選ばれし勇者にして、魔王討伐の英雄。
村長の娘にして、俺の唯一無二の幼馴染。
重たい空気を打ち壊すように、俺は仕事用のシャベルを手に取る。新聞によるとアリシアの遺体は魔王城に取り残されたままらしい。
「どこへ行くんだ」
「アリシアを埋葬しに行きます」
「危険だ! 殺されておしまいだぞ!」
村長の忠告を無視し、北に向かって走った。
今なら伝えられる。好きだということを。
返事は来ないけど、それでも良かった。
拝啓、勇者よ。俺が今から葬りにいく。 ハゲタコ長男坊 @def123456
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