第24話
2月14日の朝。そうバレンタインがやってきた。毎年チョコを貰った経験の無い、俺からしたらただリア充が妬ましいだけの日だ。朝ごはんを食べてる途中、インターフォンが鳴る。
「和樹くん、由奈だよ!おはよー!ドア開けてー」
「はい、あ。斉と、いや由奈さんおはようございます。」
ドアを開けると、冷たい風と共に斉藤さんが現れる。
「マカロン作ったのー、ハッピーバレンタイーン!今度会う時、感想教えてくれたら嬉しいな!大学行ってくるね!またね!!」
そう言って言いたいことだけ伝え、俺にマカロンを渡し大学に向かって行った斉藤さんは、まるで嵐だった。手には、斉藤さん多分お手製のマカロン。缶とか社名の書いてあるものとか貼ってないし。マカロンなんて洒落た物と縁の無かった俺は、初めて食べる食べ物だ。
「てか、マカロンって作れるんだ…なんか無駄に高いイメージしか無い」
食べてみたけど、サクッとした食感かつしっとりしている初めての感覚だった。外は硬いのに、中はねっとりとしている。チョコ味で結構美味しかった。
(これは、お返ししなきゃいけないやつだな…)
今年はチョコ?ていうかお菓子貰ったけどエロゲキャラからのチョコは数に含まないだろ。目指すは、すみれちゃんからの義理チョコだ。音楽祭で関わったからもしもでいいから、貰えないかなぁ。そして学校に着き早々、上谷さんと山下さんから突撃を受けた。
「田中くん、あたし田中くんのためにチョコ作ったんだけど。受け取りなさいよね」
「え、ありがとう。山下さん」
山下さんからは、ブラウニーみたいなのを貰えた。普通に、美味しそうだし貰えることは嬉しいんだけど相手がなあ…なんてのは、わがままか。それに山下さんも手作りっぽい。普通のビニール袋に入ってマステで留めてあるだけだ。サイズも結構大きい。
「あ、花鈴ちゃんずるーい。私も田中くんにクッキー作ったよ!あげる!!」
「上谷さんもありがとう。2人とも後で食べるね」
クッキーはさすが女子って感じでチョコペン?とかなんていうんだっけこれ、丸い飾りみたいなやつでデコられていた。
「ようモテ男、はよー」
「いや、晃成にモテ男って言われても…あれ?晃成こそチョコとか貰いまくってそうなのになんで1個も持ってないの?」
非モテ代表だと思っている俺ですらもう3個も貰ったのに、晃成の手には一個もチョコが無かった。
「あー、小学生のときに貰ったチョコの中に爪とか髪の毛が入ってて…それ以来トラウマなんだよな、バレンタイン。だから元々ストーリーとかでそう言う話して受け取らないって、言ってたんだよ。それに、小学生っておまじないとか好きじゃん。血とか入れたって言う子の噂とか聞いて、なおさら無理になった」
「血…それは嫌になるわ。嫌なこと思い出させてごめん」
「いーの、いーの。気にすんなって」
晃成の壮絶な小学生期の話を聞いて怖くなってしまった。斉藤さんのマカロン食べちゃったけど、何も入ってないよな…まぁ、大丈夫だろう。さすがに血はいれたりしないだろう。朝指とか怪我してなかったと思うし。
「それは、あれ?山下さんと上谷さんから?」
「そう。ブラウニーが山下さんで、クッキーが上谷さん」
「へー。2人とも器用だな。クッキーとかめっちゃアイシング乗ってるし」
これアイシングっていうんだ。おっさんの知識が1つ増えた。ちなみに、ホームルームが終わった後に2人から貰ったチョコ達を食べたけど、2人とも美味しかった。やっぱお返ししなきゃだよね…
女子高生、女子大生に向けた良いお返しって何だろう。俺はこの疑問にしばらく悩まされるのであった。ちなみにこの日ずぅっとすみれちゃんからのチョコを待っていたが、貰えなかった。悲しい。
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