第14話
夏休みもあっという間におわり、学校生活が始まった。9月は読書週間とかだそうで、俺ら図書委員会は読書の推進を校内でしなければなくなった。校内にポスターを貼ったりするとかホームルームで告知をするとかそんなんだ。
2年は、読書感想文的なポップを1人1人作らなきゃいけなくて、1番だるそうだった。来年は絶対に、図書委員会に入らないって心に誓った瞬間だった。けど入るんだろうなって未来が見える。だるいけどしょうがないか…
今は同じ、図書委員である山下さんと教室で居残ってポスターを作っている。俺が主に内容を書いて、山下さんには装飾で貼る折り紙を作ってもらっている。が、一通り作り終わったらしく、スマホを触っている。俺が真面目にやってる中、スマホ触ってるのはちょっとイラッとするが大人らしく適当に放っておくことにした。
正直、山下さんにはおっぱいガッツリ触っちゃった思い出しかないから、若干気まずさがある。晃成によると、山下さんはモテる割にガードが硬いらしいって言ってた。俺にもガードが硬いままであってほしい。
「ねぇ、田中くん」
「え、どうした?字きたな、」
い?とか聞きたかったのに、被せられて変なこと言われた。
「あんた、あたしの彼氏になりなさいよ」
さっきまで多分友達とチャットしてたであろう山下さんに、そう急に言われたもんだから理解が追いつかなかった。え、今なんておっしゃいました?
「…ごめん、聞き間違いじゃ無かったら彼氏になれとか言った?」
「そうだけど、何よ」
さも、当然ですとばかりに返された。思わず、顔が引き攣った気がする。ガードが硬いんじゃなかったのか!?てか、急に彼氏になれって何!?とか考えてたら、山下さんが俺の座ってた椅子の背もたれに手をかけて来て、ペンを持ってた俺はインクがポスターに付かないようにとか思ってたら移動できなくなってた。
「4月にあんたに胸触られた時から、あたしはあんたにおかしくされたのよ!あんたのこと見ると、ドキドキしたり、また触ったり、触られたりできないかななんて思うし…今までこんな思いしたことなかったのに、あんたに振り回されっぱなしよ!どう責任とってくれんの?」
「責任と言われましても…俺には何も、できないです」
めっちゃ敬語になってしまった。そうしたら、唇に何かふに、とあたる感覚と共にふわっと香る柑橘の匂い。そして額にあたる前髪の感触。あれ、俺もしかして山下さんにキスされた?
「はぁ…やっと田中くんに触ることできた…」
にっこり笑いながら頬を染める山下さんに、俺はやっとキスされた現実を受け入れざるを得なかった。今世では多分ファーストキスであろう田中和樹の体はびっくりして固まっている。
「私のファーストキス、奪っちゃったね田中くん。もちろん、付き合ってくれるよね?」
「え、いや。む、無理です。それに山下さんが強引にしてきたから、俺が奪ったわけでは無いし」
「花鈴って呼んでよ、私も和樹って呼ぶから。あはは…何か名前呼びできたら嬉しくなっちゃった。和樹もあたしのこと名前呼んで」
そう言って、俺の上に座ってきた山下さんは俺の首に腕を回して抱きついてきてもう1回キスしてきた。山下さんは目を閉じてこの一瞬に酔いしれている、っていう感じだ。俺としては好きな子じゃない子とキスするなんてありえないし、したくない。頑張って腕を振り解き、椅子から立ち上がって机の上に山下さんを座らせる様にして俺から離した。
「なんだ、和樹も乗り気じゃない。ねぇ、もっときす…して」
「山下さん。俺には、好きな子がいるのであなたの願いを叶えることはできないです。名前で呼ぶこともないし、キスすることも無いです。想いに応えられなくてごめんなさい」
「…ひどいよ、あたしとこんなにキスしておいて、断るの?…いいもん、和樹が振り向いてくれるまであたしずっと好きでい続けるし、勝手にする!!」
山下さんはちょっと泣きながら、カバンを掴んで教室から出て行ってしまった。今回はほぼ俺が被害者なのに、なんでこんなに罪悪感があるんだろう。今ので作っていたポスターがぐしゃぐしゃになってしまった。俺はまだ山下さんと関わらなきゃいけないということと、ポスターを作り直さなければいけないという思いで胃が痛くなった。
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