第8話
とりあえず家に上げる際に、びしょ濡れになっていた靴に新聞紙をつめたりタオルを用意したりバタバタしながら、斉藤さんを家にあげた。
「全身びしょ濡れの由奈さんから、シャワー浴びてください。なんならお湯溜めてくれても平気なんで、ちゃんとあったまってください。ていうかお湯溜めますね。あ、あと服は乾燥機まわしちゃうんで洗濯機の中に入れといてください」
シャワーしかしないが俺は毎日風呂掃除をしてるので、浴槽は綺麗なはずだ。電源のスイッチを入れてお湯を溜める。
「やっぱ気遣いの鬼じゃん。ありがと!じゃあ、先にシャワー借りるね」
他人が自分の家でシャワーを浴びてる、ってなんか変な感じだ。社畜時代の俺は彼女がいなかったので、こういう経験がないからだけなのかもしれない。…なんか悲しくなってきたな。思い返すのは辞めよう。
そういえば風呂入ってもらったのはいいが、服について考えてなかった。とりあえず俺のTシャツとジャージ貸す、でいいのかな。下着とかないと乳首とか透けるよね。どうしよう。色付きのに一応しとくでいっか。
「斉藤さーん。一応着替えここに置いておきますね」
俺がTシャツを置くのと、由奈さんが風呂場から出てくるタイミングが同時だった。風呂ちゃんと浸かったのかな、出てくるの早かった気がするんだけど。それとも俺が服についてめっちゃ考えてただけ?
「すみません!!!!」
「別に和樹くんだったら平気なのにー…あ!着替え貸してくれてありがと!」
急いで脱衣所を出たが、由奈さんの裸は見えてしまった。おっぱい大きいなあと思ってたけど、やっぱ実物も大きかった。
(乳首は見えてないからセーフ!)
俺はLサイズの服を着てるんだが、由奈さんが着てみても上は袖が長いくらいでちょっと悲しい。なんか、イメージだとぶっかぶかで、ワンピースとかになるイメージなんだけど。
「ごめんズボンの方緩くて落ちてパンツ見えそうだから、ヘアゴムで縛っちゃったんだけど大丈夫?」
「あ、全然いいですよ。それに俺もシャワー浴びてくるんでゆっくりしててください」
乾燥機をつけた後、風呂場に入る。由奈さんが入ったあとの風呂場は、なんかいつもと違っていい匂いがして不思議だった。なんでなんだ。使ってるボディソープだって一緒。体臭なわけじゃないだろうし、なんでこんなに匂いつくんだ。入浴剤だって入ってないし。謎だ…
(てか、めっちゃ腹減った)
いつもより遅い帰りだったことと、いろんなことがあって疲れてしまった俺は空腹のピークにきていた。リビングに戻ると由奈さんがドライヤーで髪の毛を乾かしているところだった。俺の使ってるやっすいドライヤーなんかで乾かせさせちゃって、なんか申し訳なくなってしまった。
「夜ご飯の材料全然ないんで、パスタとかうどんとかそんなんしか作れないんですけどアレルギーとかありますか?」
「アレルギーとか無いし、むしろ由奈が作るよ!こう見えて料理とか好きなんだー。冷蔵庫見ていい?あるものでパパッとなんか作るよ」
その後冷蔵庫を一通り見た由奈さんが、適当に作ったというご飯はなんかよくわからんオシャレな料理だったけどめっちゃ美味しかった。何かのトマト煮みたいなこと言ってたな。よくあのカラカラな冷蔵庫から生まれたなっていう感想が、食べてる最中止まなかった。
(しみじみと思うけど、なんでエロゲキャラって女子力高い子多いんだろう…勝手なイメージだけど高い子多い気がする)
その後各々課題をやったり、ちょっと話してみたりしてようやく寝るころになった時に問題が発生した。そう、どっちがどこで寝るかだ。もちろん俺は床で寝るつもりだし、斉藤さんとは別の場所で寝る予定だった。
「俺、床で寝るんで嫌じゃなかったらベッド使っていいですよ」
「え、ベッドで寝ていいの?私床で寝るつもりだったよ」
「いや、今日雨にも打たれましたし風邪ひいたら困ると思うんで」
俺自身は潔癖じゃないし、ある程度誰が寝たところで気にしない性格だ。それに一晩くらい床で寝たって、この体だったら全然疲労も溜まらないだろう。それにカーペットも敷いてあるし余裕だろう。
「和樹くん…もし和樹くんが嫌じゃなかったら一緒に寝ない?」
ベッドに腰掛けた由奈さんに一緒に寝ないか誘われたけどはっきりと断る。
「俺は床で寝るんで大丈夫です。なにより付き合ってもないのにそういうこと言ったらダメですよ、って前言ったじゃないですか」
俺は今立ってる状態で、由奈さんは俺のベッドに座って前屈みになってる。そのせいで谷間とかがバリバリに見えてる。好きな子とこんな状態になったら襲ってたかもしれないが、由奈さんとそういう関係になるつもりは一切ない。
「だから由奈さんと付き合ってない俺は、一緒に寝れない…というか寝たくないです」
「…そっか。じゃあ今日は諦める。悲しいなぁ…和樹くんと一緒に寝れなくて」
由奈さんはむーて感じで納得いかないって感じの顔してたが、そのままお互いに眠りについた。ちなみに翌朝襲われるなんてことがないように、めっちゃ早起きした。また納得いかないって顔をされたが、自衛は大事だ。俺はエロゲキャラなんかじゃなく、自分の好きな子とちゃんと付き合いたいし!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます