「全てを失う前に」

@torati0923

第1話 始まりの嘘

俺は噓をつく

その嘘をつく癖が原因で友達も居なくなった。

そして孤独な日々を送っていた。

昔から親に嘘をつくなと散々言われてきた。

俺も初めから嘘をつく奴だったわけではない。

人は誰だって理由だったり、その時の環境によって変化していくものだ。

良く変わる人もいれば悪く変わる人もいる。

俺の場合は後者だった。


俺は昔からヤンチャな悪ガキだった。

小学生の時は自分で言うのもなんだがクラスの中心人物で人気者だった。

野球チームに入っていて、県の選抜チームに選ばれたりもしていた。

中学生になると相変わらずヤンチャだったが常に中心人物だった。

そんな俺にも彼女が出来た。

彼女は成績も優秀で運動神経も良く周りからは美人と言われているような高嶺の花だった。

学校で話していると周りからヒューヒューなんて言われて

誰もが羨むカップルなんて言われていた。

それからは順調に楽しい学校生活を送っていた。


あれは中学2年生の時、彼女といつも通り一緒に帰っている時のこと

彼女が「うちの友達が学校で虐められている」と急に聞かされた。

彼女には絵里香っていう友達が居て、クラスも部活も違うが仲が良かった。

その絵里香がLINEのグループで悪口を書かれたり、あだ名をつけられたり

盗撮した写真を張り付けられたりしている。ということだった。

俺はすぐに主犯格を彼女に聞いた。

それはいつも俺が一緒に絡んでいたグループのひとりだった。

俺はすぐにそいつに連絡をして、止めるように言った。

彼女の前でカッコつけて俺が言えば大丈夫だ。なんて言った。


次の日のことだった。

学校にいつも通り行くと、クラスのみんなの反応がよそよそしかった。

何かいつもと違うことに違和感をすごく感じた。

いつものグループの奴らが来た。

話しかけに行くと全員に無視をされた。

そう、次は俺がそいつらの標的になったんだ。

その日から今まで充実していた俺の学校生活は終わった。

その矛先は俺だけではなく彼女にまで向けられた。

彼女もその日からクラスで無視をされるようになり、今まで皆勤だったが休みがちになってしまった。


そして俺は完全に学校に行かなくなり、学校に行っていない先輩達と遊ぶようになった。

昼に起きて酒やタバコ、夜になればバイクの後ろに乗せてもらったりしていた。

その先輩に学校に行かなくなった理由などを全て話した。

先輩にはやり返してこいと言われた。

そして俺はやり返しにいった。

主犯格や一緒に居る奴ら全員なりふり構わず殴ったりした。

あまり記憶はないが、我に返ったとき拳がすごい痛かったことは覚えている。

それから俺は完全に不良のレッテルを貼られ、あいつとは関わるな。と世間で言われるようになった。


それから適当に毎日を送り、俺は金を払えば誰でも入れる高校に入学した。

本当は高校に行かずに働こうと思っていたが、親父から高校にだけは行ってくれと言われたのを理由に入学した。

そしてすぐに友達が出来た。力って書いてつよしって奴が。そいつも俺と同じような境遇ですぐに打ち解けた。

今は恥ずかしくて言えるもんじゃないが、よくそいつとは

「俺らは何があっても裏切らない」

「俺らは何があっても守るしダチだ」

なんて言ったりしていた。

そんな時、力から彼女を妊娠させてしまったから中絶費用を集めるのに協力してほしいとお願いされた。

俺は普段から恥ずかしいことを言い合っていたのもあって、断れなかった。

集めるといったって何をする?と聞いた。

力もなかなかの悪だったから考えることも普通ではなかった。

力に言われたのは、近所のカードショップの高額カードを盗んで売ろうっていう内容だった。

俺はそれに同意をしてしまった。

そして実行した。

ただ盗んだのはいいものの俺らは未成年でカードを売るには18歳以上でなければ売れなかった。

そこで俺の彼女をうまく誤魔化し、俺には2歳年上の姉が居るんだが

その姉の保険証を盗んで彼女にお願いして、嫌々売りに行かせた。

そして集まった金を全部力に渡した。

それからすぐに警察から電話があり、俺も彼女も事情聴取をされた。

彼女はそのままの出来事を全部正直に話したが、俺は力を守らないといけないと思い

最後まで嘘をついた。俺の親も姉も呼ばれたが、最後まで嘘をついた。

全部俺が金が欲しくてやった。売った金は全部遊びに使った。とか全部俺のせいにした。

事情聴取が終わり、姉から本当にお前なのか、本当は誰かを庇っているんじゃないかと言われたとき、自然となんでわかるの?と聞いてしまった。

俺の反応を見た姉は泣きながら、やっぱり誰かを庇ってるんだ。と両親に話した。

晴哉がこんなこと自分のためにするわけがない。と姉が強く親に話しているのを見て俺も自然と涙が溢れてきた。

それでも最後まで俺は力の名前を出さず嘘をついた。

結局、俺は家庭裁判所に行くことになった。

幸い、保護観察処分で済んだが高校は無期停学になり、家族にも散々迷惑をかけた。

ここから俺は嘘をつくようになってしまった。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る